155 私を何と呼んだの

「今は矢崎粟が私に近づいてきているのに、あなたは自分の兄が彼女に騙されるのを見ていたいの?」

矢崎政氏は矢崎弘の激しく上下する胸を見て、すぐに前に出て落ち着かせようとした。矢崎若菜に怒りで何か起こるのを恐れていた。

矢崎政氏は矢崎弘の胸を叩きながら呼吸を整えさせ、電話に向かって言った。「三兄さん、忘れないでください。矢崎粟は既に公に矢崎家との関係を絶っているんです。彼女の体には矢崎家の血が流れているとはいえ、もう自分が矢崎家の者だと認めていません。今回、安藤綾の件を利用して罠を仕掛け、わざと二兄さんを陥れようとしたのは、明らかにその血のつながりさえ無視しているということです!」

矢崎政氏の言葉に、電話の向こうの矢崎若菜は呆然とした。信じられないように呟いた。「そんなはずない、矢崎粟は撮影現場で私を医務室まで連れて行ってくれたのに...」