澤兼弘の眼差しは強い決意に満ちていて、矢崎粟は思わず戸惑った。
妹が戸惑うのを見て、矢崎泰は口を開いた。「澤兼弘さん、まずは待遇を確認してから決めた方がいいでしょう。後で後悔することになりかねませんから。」
「矢崎社長の言う通りです。みなさん、まずは事務所の提示する待遇を聞いてみましょう。」二十八歳の魅力的な女優、安藤綾が場を和ませるように言った。
矢崎粟は頷いて、事務所が提供できる待遇について説明し始めた。
「事務所は立ち上げたばかりなので、紫音のような老舗プロダクションには資源面で及びませんが、皆さんご安心ください。福利厚生面では、それぞれの立場に応じて最高ランクのAクラス契約を提供させていただきます。」
矢崎粟がAクラス契約を提供すると言うと、その場にいたアーティストたちの目が輝いた。