167 一夜で大金持ち

男性と小島一馬の会話がS国語だったため、周囲の人々は彼らの会話を理解し、今や小島一馬と矢崎粟を見る目が徐々に曖昧になってきた。

矢崎粟は先ほど男性の口の動きから大体何を言っているのか分かったので、気まずい雰囲気を避けるため、すぐに口を開いた。「もし対戦相手を説得できるなら、あなたの挑戦を受けます」

男性は喜色満面で、急いで3位の選手と相談した。3位の選手は矢崎粟の快進撃を見ていて、自分が彼女に勝てないことは分かっていたので、すぐに1位の選手と矢崎粟が先に戦うことに同意した。

男性には実力があり、矢崎粟の一挙手一投足から彼女が相当な実力者だと見抜いていた。

そのため試合が始まると、紳士的な態度を見せることもなく、慎重にフェイントで矢崎粟を試した。矢崎粟が彼のフェイントを見破れることが分かると、男性はもはや躊躇することなく、電光石火の勢いで攻撃を仕掛けた。

二人は試合台の上で互いに攻防を繰り広げ、観客たちは思わず手に汗を握った。配信を見ている視聴者たちは、矢崎粟と男性のどちらが勝つかを賭け始めた。

最後に矢崎粟は男性の隙を突き、攻撃姿勢を変えた瞬間に、腰部を蹴って倒した。

転倒した際に足を捻ってしまい、男性は最終的に残念ながら降参することになった。

矢崎粟は男性を倒して一気に1位となり、審判が何度も確認して挑戦者がいないことを確認した後、九千九百九十九S国通貨の賞金を手にした。

矢崎粟が1位を獲得すると、小島一馬と山田勝は彼女以上に興奮し、二人は左右から彼女の側に立ち、トロフィーを持つ彼女と一緒に写真を撮ってネットに投稿した。

今回の番組は競技部門を設けていなかったため、番組側は彼らが不正をすることを心配する必要がなく、携帯電話を預かることもしなかった。

数時間の大道芸で二百S国通貨にも満たない収入しか得られなかった矢崎美緒は、休憩時間中にネット上で小島一馬が投稿した写真を見て、歯ぎしりするほど腹を立てた。

なぜ自分はこんなに頑張っているのに収入が少なく、矢崎粟は数試合するだけであんなに多くの賞金を手にできるのか?

「矢崎粟が意外と凄いね。今まで家では功夫ができるなんて聞いたことなかったのに」矢崎政氏は水を飲む合間にそう褒めた。