168 矢崎美緒の異常

「言ってもいいけど、美緒の前では言わないでね」矢崎若菜は彼のうるささにうんざりして、追い払うように言った。「仕事をしないなら、どこか隅っこで待っていなさい」

矢崎政氏は肩をすくめ、涼しい場所を見つけて、こっそりと矢崎粟たちのチームの動きを見守っていた。

矢崎粟が二人のメンバーとホテルの部屋を予約しに行くのを見て、彼は羨ましくてたまらなかった。自分のチームの厳しい預金状況と少ない収入を思うと、矢崎政氏はため息をつかずにはいられなかった。

あの時、矢崎粟をチームに誘えていたらどんなによかっただろう。炎天下でパフォーマンスをして金を稼ぐ必要もなく、もしかしたら矢崎粟との関係も修復できたかもしれない。

矢崎粟たちは部屋を取った後、一時間休憩して体力を回復させてから、任務の計画を立て始めた。

番組スタッフから与えられた任務は、海に近い五つ星ホテルで花火ショーを観覧し、花火を見ながら記念写真を撮ることだった。

「この五つ星ホテルに今は泊まれないけど、夕食をそこで楽しく食べて、食事しながら花火を見るのもロマンチックじゃない?」小島一馬は遠慮なく提案した。

彼の提案は矢崎粟と山田勝の賛同を得て、配信を見ている視聴者たちも彼のこの大胆な態度に笑わされた。

【初めて見たわ、パトロンに頼りながらもパトロンの考えを左右しようとする人】

【小島一馬は流石に小島一馬だね、いつも普通の人より大胆】

【でも、このようなパトロンにすがる経験、私もしてみたい。矢崎粟様、この足手まといの私も連れて行って!】

「五つ星の海景レストランで夕食を食べながら花火を見るなんて、こんな幸せなことまだ経験したことないよ!ボスありがとうございます!」山田勝はにこにこしながら矢崎粟を褒めた。「田中凛さんの言う通り、あなたは本当に世界一最高のボスですね!」

山田勝はデビューした時確かに少しお金を稼いだが、すぐに圧力をかけられ、五つ星ホテルで食事する余裕もなかった。

矢崎粟は彼の様子に笑みを浮かべた。「じゃあ、みんなしっかり働いてね。世界一最高のボスの期待を裏切らないように!」

矢崎粟たち三人の夕食は四千元以上かかった。三人の中で誰がラッキーだったのか分からないが、彼らが予約した時にちょうどホテルレストランの99番目の客となり、ホテルは無料で海景露天プールの利用権を与えてくれた。