172 あなたには向いていない

「ねえ、手に持っている桃の花の枝を下ろしてくれない?顔を隠さないでよ!」カメラマンは矢崎美緒のポーズを何度も修正した後、ついに我慢できずに声を上げた。

ポーズに集中していた矢崎美緒はカメラマンに驚かされ、思わず普段使う哀れっぽい表情を浮かべた。

矢崎美緒は大声で怒鳴られたことでカメラマンに罪悪感を感じてほしかったのだが、カメラマンは罪悪感を感じるどころか、彼女がその表情を見せた後に喜んで大声で言った:「そうそう、その表情!そのまま保って!」

「...」矢崎美緒の表情が凍りついた。彼女が望んでいたのはこんな結果ではなく、カメラマンに怒鳴ったことを謝ってほしかったのだ!

【美緒姫のあの表情、笑わせるわ。】

【プロ意識の高いカメラマンだね。姫の可愛そうな演技は無駄だったね。】

【何が演技よ、美緒は繊細なのに、このカメラマンが大声で驚かすなんて、明らかにカメラマンが悪いわ!】

【これは何というバカなファンだ。矢崎美緒姫が表では善良で裏では悪意に満ちているという設定は何度も証明されているのに、まだ擁護する人がいるの?】

ネット上では、矢崎美緒のファンが彼女を擁護しようとして、ネットユーザーと大喧嘩になっており、画面いっぱいのコメントに多くの静かに番組を見たい視聴者が離れていった。

林監督は矢崎美緒の配信ルームの人気度が下がっているのを見て眉をひそめた。他の人の配信ルームは話題になると人気が上がるのに、なぜ矢崎美緒のところだけマイナス成長になるのだろう?

この矢崎美緒は不運のバフを持っているんじゃないのか?

矢崎美緒は自分が監督に不運者のレッテルを貼られたことも知らず、まだ一生懸命カメラマンに協力してポーズを取っていた。やっと撮影が終わって休憩に入り、SNSを開いたら、ネットユーザーのコメントに腹が立った。

何が可愛そうな演技よ?

明らかにカメラマンが悪いじゃない。初めてのモデル撮影なのに、もう少し辛抱強く、何度かアドバイスしてくれてもいいじゃない?

「完璧だ。」矢崎政氏の撮影をしているカメラマンは感嘆の声を連発した。「政氏君、君がモデルをやらないのは本当にもったいないよ!」

カメラマンは撮影開始から矢崎政氏に転職を勧め続けていた。矢崎政氏は彼と言葉を費やすのが面倒で、彼がこの話題を出すたびに、照れくさそうな表情で笑うだけだった。