そう思うと、渡部悠人は拳を握りしめ、目に憎しみが浮かんだ。妻が彼女を信頼していなければ、こんな罠にかかることはなかったのに。
彼女は妻の信頼を利用してこんなことをしでかした。絶対に許すわけにはいかない。
義兄が骨董品オークション会場のことを話すのを聞いて、小島一馬の目に不安が浮かんだ。こんな卑劣な手段まで使ってくるということは、今回の川上家は必ず手に入れようとしているに違いない。
義兄が大変なことになってしまった!
今回の件が解決したとしても、きっと他の問題も起きるだろう。あの悪女に対しては、どんなに警戒しても足りない。
今、義兄は怪我をしている。次があれば、命を落とすかもしれない。
小島一馬は頷いて言った。「義兄さん、今回の川上夕子は確実にあなたを狙っているようですね。今回失敗したからといって、また同じような卑劣な手段を使ってくるかもしれません。そうなったら厄介ですよ。」
小島一馬の考えは的外れではなかった。
渡部悠人は眉をひそめ、深く考え込んだ。今回の骨董品オークション会場は年に一度の、最も重要な仕入れルートの一つだった。
行かなければ、渡部商会は利益の三分の一を失うことになるかもしれない。
だからこそ、行かざるを得ない理由があった。
渡部悠人は矢崎粟に視線を向け、誠実に尋ねた。「矢崎さん、今回の骨董品オークション会場には必ず行かなければならないのですが、同行していただけないでしょうか。私たち渡部家は心からお願いしたいと思います。あなたがいれば、私も安心できます。」
彼は一旦言葉を切って、「報酬に関しては、お金がご希望でしたら問題ありません。矢崎さんご自身もスタジオを経営されていると聞きましたが、芸能界の人脈が必要でしたら、私たち渡部家にもそういった繋がりがあります。いかがでしょうか?」
その時、小島心はそれを聞いて目を輝かせた。この矢崎さんはバラエティ番組で相当な実力を見せたと聞いている。彼女が一緒に行ってくれれば、もっと心強いはずだ!
どんなにお金を稼ぎたくても、やはり夫の無事を願っている。
「矢崎さん、ご安心ください。私たち小島家も芸能界の人脈があります。」小島心も急いで言った。
一緒に行けるなら、それは本当に良いことだ。
矢崎粟はそれを聞いて、目に光が宿った。風水師として、当然骨董品についても多少の知識がある。