187 身体に盗聴器

「ええ、暇だったから遊んでいただけよ。私に何か用があるの?」矢崎粟は率直に尋ねた。

田中凛は軽く首を振り、口を指差して、直接話せないことを暗示した。

その後、いつものように言った。「今日、撮影現場で粟さんの演技を見て、少し教えを請いたいと思いまして。粟さんお時間ありますか?」

背後の人物を油断させるため、田中凛は嘘をついた。

ここまで見て、矢崎泰も理解した。

恐らく田中凛は何かを知っていて、今夜密告しに来たのだろう。しかし直接話せないのは、盗聴器を付けられているからかもしれない。

矢崎泰は即座に判断し、机からノートを取り出して、彼女にペンを渡し、頷いて合図した。

田中凛は感謝の意を込めて頷いた。

矢崎粟は演技指導をしているふりをして、話し続けた。「演技をする時は、役になりきらないといけません…」

田中凛は時々相槌を打ちながら、机の上のノートにどんどん文字を書き込んでいった。

田中凛は書いた。「私は誰かに秘術をかけられていて、それらのことを直接あなたたちに話すことができません。でも、いくつか警告したいことがあります。私と矢崎美緒は双子で、背後の人物は私たちを育てて、ある目的を達成しようとしています。」

二人が読み終えるのを見て、さらに続けて書いた。「粟さんと矢崎美緒には深い繋がりがあります。これはとても重要なことです。背後の人物は次回の番組で行動を起こそうとしています。私たちを古城に行かせて、彼が手を下しやすいようにするつもりです。」

最後に強調して書いた。「粟さんは必ず警戒してください!」

これを読んで、矢崎泰は歯ぎしりするほど怒った。背後の人物がここまで手を伸ばしているとは思わなかった。バラエティ番組まで支配し、次回の撮影場所まで彼らが選んでいたとは。

矢崎粟はこれを聞いて、しばらく考え込んだ。

彼女は古城のことを知っていた。そこは古風な雰囲気が漂う場所で、古代の建築物が今も残っており、中の人々も古装で歩き回っている。

そこには多くの達人や異能者がいる。

道家協会も古城の中にある。

ちょうど師匠が保管している物を取りに行く必要があったので、バラエティの撮影で行くなら都合が良い。

「その人は誰?」矢崎粟は紙に書いた。

彼女は背後でこれら全てを仕組んでいる人物が誰なのか、どんな目的があるのか知りたかった。