187 身体に盗聴器

「ええ、暇だったから遊んでいただけよ。私に何か用があるの?」矢崎粟は率直に尋ねた。

田中凛は軽く首を振り、口を指差して、直接話せないことを暗示した。

その後、いつものように言った。「今日、撮影現場で粟さんの演技を見て、少し教えを請いたいと思いまして。粟さんお時間ありますか?」

背後の人物を油断させるため、田中凛は嘘をついた。

ここまで見て、矢崎泰も理解した。

恐らく田中凛は何かを知っていて、今夜密告しに来たのだろう。しかし直接話せないのは、盗聴器を付けられているからかもしれない。

矢崎泰は即座に判断し、机からノートを取り出して、彼女にペンを渡し、頷いて合図した。

田中凛は感謝の意を込めて頷いた。

矢崎粟は演技指導をしているふりをして、話し続けた。「演技をする時は、役になりきらないといけません…」