188 呪術を解く

呪術に巻き込まれて、彼はいつも不安を感じていた。

矢崎粟の命が危険にさらされることを恐れており、解けるものなら早めに解いておきたかった。

そうでないと、心が落ち着かない。

矢崎粟は少し考えてから、ノートにこう書いた。「この呪文は、おそらく呪いをかけた本人が解くか、その人が死ぬまで完全には解けないでしょう。強制的に解こうとすれば、双方とも反噬を受ける可能性があります。今は運気が私の方にあって、矢崎美緒の方は運気がどんどん悪くなっているので、急ぐ必要はありません。」

この呪文の恐ろしさは、まさにここにあった。

たとえ見破ったとしても、解除する方法がなく、強制的に解除すれば両者とも傷つくだけでなく、相手に警戒されてしまう可能性もある。

三人が書き込んでいる最中、外からドアベルの音が聞こえた。

矢崎泰は額を叩いて言った。「きっと弟が来たんだ。今日は車を運転していないから、30分後に迎えに来てもらうように頼んでいたんだ。もう時間かな。どうしよう、外で待たせておく?」

矢崎粟は首を振り、目を輝かせながら言った。「中に入れましょう。彼の選択を見てみたいわ。」

田中凛は彼女に考えがあるのを見て、立ち上がって別れを告げた。「では、私は先に失礼します。粟さんのご指導ありがとうございました。必ず良い演技をお見せします。」

彼女は今や人型の監視カメラのようなものだから、もうここにいる必要はなかった。

彼女が去った後の方が、話がしやすくなる。

「では、お見送りします!」矢崎粟は立ち上がり、彼女をドアまで送り、そこで矢崎弘と出くわした。

しかし矢崎弘は彼女を見るなり、まるで幽霊でも見たかのように驚いた。「なぜあなたがここに?」

兄を迎えに来たのに、まさかここに矢崎粟が住んでいるとは思わなかった。

矢崎粟は彼をちらりと見ただけで、中へ向かって歩きながら言った。「お兄さんが入るように言っています。」

言い終わると、矢崎粟は立ち去り、矢崎弘は一人途方に暮れたように立ち尽くした。

「入ればいいじゃないか、怖くなんかないさ!」彼は中を覗き込み、兄が確かに中にいるのを確認してから、ゆっくりと中に入っていった。「兄さん、まだ行かないの?」