この件は矢崎家で解決すべきことで、必要がない限り矢崎粟は助言をしないつもりだった。矢崎家の人々は長男以外、彼女とは無関係だった。
「わかった……」矢崎弘はため息をつきながら言った。
彼も理解していた。今の矢崎粟がこれらを話してくれるだけでも十分な親切で、彼には矢崎粟に解決策を強要する権利はなかった。
結局は自分で何とかするしかない。
矢崎弘は少し考えてから、静かに尋ねた。「この件を三弟と四弟に話すべきかな?」
彼はこの件を知っていながら黙っているのは、心苦しく感じていた。
「ふふ……彼らが信じると思う?」矢崎粟は意味深な笑みを浮かべながら、首を振って言った。
あの二人は矢崎美緒の忠実な番犬だ。話したところで、絶対に信じないだろう。
まずは体験させてから、後で話した方がいい。
この言葉を聞いて、矢崎弘は少し照れくさそうに頭を掻きながら、「確かに、彼らは僕以上に美緒のことを大切にしているけど、このまま放っておくのは心苦しいな」と言った。
矢崎泰は彼の肩を叩いた。「何も知らないふりをしていればいい」
今は動かないのが一番いい。
もし話せば、あの二人はきっと冗談のように矢崎美緒に話すだろう。矢崎美緒が知ったら、必ず警戒するはずだ。
「彼らに体験させてから話した方が、効果は絶対にいいはずよ」矢崎粟は意味深な目で、えくぼを深くしながら言った。
矢崎泰から見ると、それは腹黒い小狐のようだった。
矢崎泰は苦笑いしながら首を振った。
どちらにしても、彼は矢崎粟を支持する。まず体験させた方が説得力もある。
矢崎弘の顔に心配の色が浮かんでいるのを見て、矢崎粟は率直に言った。「安心して、彼らの運気が全部奪われない限り、命に別状はないわ」
矢崎美緒も収穫するなら、最初は一部だけのはずだ。
彼女もそこまで愚かではない。一度に全部収穫すれば露見しやすいし、背後の人も計画が台無しになるのを望まないはずだ。
この言葉を聞いて、矢崎弘の表情がようやく和らぎ、頷いて承諾した。「この数日間は矢崎美緒の行動を注意深く見守るよ。何か必要なことがあれば、連絡してくれ」
矢崎粟は頷いた。「もう遅いわ、帰った方がいいわよ」
壁の時計は、もう夜の11時を指していた。