矢崎粟の話を聞き終わると、傍らにいた矢崎泰でさえ背中に冷や汗が流れ、思わず体が震えた。
今、自分の一挙一動が監視下にあるような感覚に襲われていた。
しかも敵の実力は非常に強大で、もし矢崎粟の実力が強くなければ、矢崎家の人々だけでは敵の存在すら気付けなかっただろう。
矢崎泰は躊躇いながら尋ねた。「彼ら三人が過ごしてきたことで、矢崎美緒にかなりの運気を与えてしまったのではないでしょうか?」
三歳の時から矢崎美緒が矢崎家に入って以来、今まで十数年が経っている。矢崎粟の説明によると、彼女を可愛がることも運気を与えることになるという。
そうなると、今までにかなりの運気を与えてしまったことになる。
無意識のうちに与えたとはいえ、確かに与えてしまったのだ。
「彼女の身に起きたことを見てみなさい。すべてが順風満帆だったでしょう?彼女が常に幸運であり続けるということは、あなたたちが与えた運気が十分だということを意味します」と矢崎粟は当然のように言った。
二人が呆然としているのを見て、さらに付け加えた。「むしろ、背後にいる者たちにも余分に与えていたのです」
つまり、矢崎家は背後の者たちにとって、養っている肥えた羊のようなものだった。
時々、彼らから運気を吸い取られていたのだ。
「なんて陰湿な話だ」矢崎泰は会社の経営を任されてから、様々な荒波を乗り越えてきたが、こんな胸が痛むような事態は初めてだった。
最も重要なのは、背後にいる者たちの情報が全くないということだ。
傍らの矢崎弘は眉をひそめ、顔中に悩ましい表情を浮かべていた。「それじゃあ、私は間接的に背後の人々を助けていたことになるんですか?もし彼らが非道なことをしていたら、私も連座することになるのでは?」
どう考えても、自分は彼らを助けていたことになる。
因果応報があるとすれば、自分にも及ぶのではないかと。
「もちろんです。あなたもその一端を担っています。たとえ無意識だったとしても、彼らを助けたことには変わりありません。天道は公平なものです」と矢崎粟は頷いた。
これらの言葉に、矢崎弘は完全に死人のような顔色になった。
本来は被害者だったのに、今度は共犯者になってしまった。本当に腹立たしい。「では、私は今どうすればいいのでしょうか?」
ずっと運気を吸われ続けるままでいいのか?