195 防ぎきれない

矢崎弘は彼女のそんな執着ぶりを見て、背筋が寒くなった。昨夜、矢崎粟が警告してくれていなければ、とっくに災難に遭っていたかもしれない。

どんな災難に遭うかも分からないまま。考えただけでも恐ろしい。

「お兄ちゃん、ちょっとだけでいいから貸してよ！私たちは兄弟なんだから、妹に運を分けてあげたって何も問題ないでしょう」傍らの矢崎政氏は眉をひそめ、いらだたしげに言った。

本当に理解できなかった。妹がここまで言っているのに、兄である矢崎弘がなぜ少しも譲歩しようとしないのか、不可解だった！

「もういい加減にしろ！朝からいい気分だったのに台無しだ。朝食も静かに食べられないなんて、耳元でぺちゃくちゃうるさいんだよ！」矢崎弘は目を転じ、テーブルを叩いて怒鳴った。

あらゆる言い訳を使い果たしたが、矢崎美緒は彼を許してくれない。今となっては怒りを装って彼女を威圧するしかなかった。

昨夜真相を知ってから、矢崎弘はずっと我慢していた。胸の中にわだかまりがあって気が晴れなかったが、今こうして怒りを出せて少しは楽になった。

そう言うと、彼は冷たい目つきで座っている三人を見渡し、大股で外へ向かった。

今逃げ出さなければ、弟たちにまた追い詰められるだろう。承諾しないと家族の罪人のように扱われる。

どうやら、二人とも矢崎美緒にすっかり魅了されているようだ。

矢崎弘は外に出ると、すぐに先ほどの会話の録音を三人のグループチャットに送り、矢崎粟に運気の半分を借りられた場合、どんなことが起こるのか尋ねた。

焦りながら待っていると、ようやく矢崎粟から返信が来たが、その内容に背筋が凍り、呆然とした。

矢崎粟がグループチャットでメッセージを送ってきた。

【この呪文は三日後に発動する。発動後はさまざまな不運が起こる。例えば道を歩いていて飛び石が頭に当たったり、食事中に大きなゴキブリが出てきたり、お風呂で熱湯火傷をしたり、車のタイヤが突然パンクしたりするのは日常茶飯事になる。】

【こういったことが毎月発生し、防ぎようがない。】

【命に関わることは少ないが、積み重なると生活が悲惨になり、精神状態も変化する。】

【さらに運気が流出すると、寿命にも影響する可能性が極めて高い。】