「私について来て、北西の方向だ」矢崎粟は谷間に向かって歩き出し、落ちてきた符紙を手で受け止めた。
他の者たちも直ぐに後を追った。
北西の方向に進むと、一行は森に出くわした。樹木は少なくとも数十年の樹齢があり、どれも太い枝と広い葉を持っていた。
「あの時はこの辺りではぐれたんだ」藤田紘は眉をひそめ、密集した森を見つめた。
森の中には大きな道はなく、唯一残っている小道も人が歩いてできたものだった。少しでも注意を怠ると道に迷ってしまう。
数人が少し進むと、矢崎粟は再び符紙で占いを行った。
今回は北東の方向を指していた。
最後に幾度かの紆余曲折を経て、矢崎粟は洞窟の前で立ち止まった。洞窟は小さく、一度に一人しか通れなかった。
洞窟の前には雑草が生い茂っていた。
洞窟の近くには蛇が一匹とぐろを巻いており、矢崎粟たちに向かって舌を出していた。