210 心を揺さぶられる

その鉄の意志は、普通の人には持ち得ないものだった。

その場にいた全員が、この光景に衝撃を受け、心から敬服していた。

「彼を連れ帰って埋葬する。今回の作戦で最も重要な情報を守り抜いた彼は、英霊墓園に入る資格がある」藤田紘は戦友の遺体を抱きながら、洞窟の外へ向かって歩き出した。

一行が谷を出ると、入り口には既にヘリコプターが待機しており、軍服を着た中年の男性が機体の横に立っていた。

その後ろには四人の若い兵士が控えていた。

一行が近づくと、兵士たちは担架を持って藤田紘の方へ向かい、彼の手から戦士の遺体を受け取った。

藤田紘は皆に挨拶を交わすと、ヘリコプターに乗って去っていった。

渡部悠人は車を運転し、小島一馬と矢崎粟をホテルまで送った。空はすでに真っ暗で、渡部悠人は用事があるとのことで、二人をホテルまで送った後、車で立ち去った。

ホテルの入り口に着いたところで、矢崎粟は川上夕子が人を連れて出てくるのを目にした。

この周辺にはホテルが多いのに、川上家がわざわざこのホテルを選んだのは偶然ではないはずだ。川上夕子の心には何か企みがあるに違いない。

川上夕子の傍を通り過ぎる瞬間、彼女は足を止め、笑顔で声をかけてきた。「矢崎さん、今帰ってきたところ?」

彼女の笑顔は目元まで届いていなかった。

少し不気味に見えた。

「ええ」矢崎粟は素っ気なく返事をした。

川上夕子は怒る様子もなく、相変わらず笑みを浮かべたまま、「今回の骨董品オークションで、あなたは渡部家の風水アドバイザーをするつもり?」

矢崎粟は曖昧に答えた。「何か問題でも?」

彼女はこの川上夕子が一体何をしようとしているのか、見てみたかった。

「いいえ、何も。私はあなたのバラエティ番組を見て、とても興味を持ちました。もしよければ、高額な報酬でうちの川上家に来てもらいたいのですが。待遇には決して失望させませんよ」川上夕子は口元を押さえて笑い、目には探るような色が浮かんでいた。

この矢崎粟がいなければ、渡部悠人はとっくに死んでいて、今回の骨董品オークションは川上家のものになっていたはずだった。

味方になってくれれば言うことはない。

もし味方にならないのなら、矢崎粟をこの世から消す方法はいくらでもある。