彼女は蝋燭に火を灯し、先ほど川上夕子と接触した手首を蝋燭の上で数回回した。
すると、かすかな痒みを感じた。
手首を上げてよく見ると、ピンク色の小さな点が現れていた。顔にできる吹き出物のような、目立たないものだった。
普段なら気にも留めないようなものだった。
矢崎粟は目を細めた。川上夕子は彼女が想像していた以上に悪質だった。彼女は単に相手の計画を台無しにし、渡部悠人を生かしただけなのに。
川上夕子は彼女の体に毒虫の卵を仕掛けたのだ。
この毒虫は、人の体内で孵化する。
一匹の毒虫が数万匹の小さな毒虫に分裂し、人の骨の中に入り込んで骨髄を吸い取って生きる。
吸収され続けることで、人は激しい痛みを感じる。
病院に行っても、原因は分からない。
毒虫に感染した人は毎晩骨を刺すような痛みを感じ、骨がだんだんと脆くなり、虫に少しずつ食い尽くされていく。