208 恩返し

矢崎粟は笑いながら言った。「私が必要な時に、また手伝ってくれればいいわ。その時のあなたの助けは、まさに雪中の炭となるでしょう」

川上燕を助けることは、矢崎粟が喜んでする事だった。

川上燕は真剣に頷いた。「これからあなたが私を必要とする時はいつでも、必ず全力で助けます」

「ありがとう」矢崎粟は遠慮せずに、川上夕子に符紙を一枚渡し、それを身につけるように言った。

この符紙には保護の機能がある。危険に遭遇した時、一度だけ身を守ることができる。

川上燕は符紙を服の一番内側のポケットに隠し、なぜか言い表せない安心感を覚えた。

矢崎粟は携帯の時間を確認し、「もう遅いわ。私たちは前後して出ましょう。それに、お互いを知らないふりをして。連絡を取れるように、友達追加しましょう」

ここまで言って、川上燕は困った表情を浮かべた。