215 心に不安

符紙が破られた瞬間、オークション会場にいた川上夕子は体が強く打たれたような衝撃を感じ、血を吐き出した。

頭の中が轟音で満ちていた。目の前が暗くなり、気を失いそうになった。

幸い、隣にいた助手がすぐに気付き、川上夕子を支え、人中を長時間押さえて、ようやく意識を取り戻させた。

意識が戻った瞬間、川上夕子は全身が引き裂かれるような痛みを感じ、その痛みに耐えきれず、しゃがみ込んで頭を抱え、涙を流した。

川上夕子は唇を強く噛んで、叫び声を抑えた。

「夕子、大丈夫か?今すぐ病院に連れて行こうか?」川上海未は眉をひそめ、急いで尋ねた。

今、川上家の骨董品オークションは、すべて川上夕子に掛かっていた。

この重要な時期にミスは許されない。そうでなければ、彼らには耐えられない結果となるだろう。

川上夕子は目を閉じて首を振った。「必要ありません!」

今回のオークションは、彼女にとって非常に重要で、川上家の真の権力者になれるかどうかを決めるものだった。

オークションが成功すれば、川上海未を追い出し、川上グループの社長になることができる。同時に、この骨董品の中から最高のものを選んで、後ろ盾となる人物に贈る必要もあった。

どんなことがあっても、耐えなければならない。

川上夕子は川上家が骨董品を手に入れるのを自分の目で確認するまで、安心できなかった。

彼女はその場にしゃがみ込んだまま、極度の苦痛に耐え続け、五分が経過してようやく、ステージ上でオークションが正式に始まるのを聞いた時、体の痛みがゆっくりと和らいでいった。

しかし、なぜか川上夕子の心は不安で落ち着かず、体から何かが徐々に消えていくのを感じているようだった。

その剥ぎ取られていく感覚は、非常に不快だった。

長い間感じ取った後、やっと消えていくものが運気だと確信した。

一体どうしたのだろう?川上夕子には分からなかった。なぜ体の運気がゆっくりと減少しているのか。

川上夕子が少し良くなると、助手に支えられて席に着いたが、顔色は依然として真っ青で、血の気が全くなかった。

彼女は席に着くと後ろの数列を見渡した。

ようやく片隅で矢崎粟を見つけ、視線が合った。

川上夕子は、今回の出来事が矢崎粟と関係があるような気がしてならなかった。

矢崎粟は川上夕子の視線に気付くと、意味ありげな笑みを浮かべた。