214 運に頼るだけ

先ほど小島一馬は矢崎粟の後ろについて歩きながら、彼女の真剣な様子を見て、矢崎粟の全身から魅力が溢れ出ているように感じた。

小島一馬の目が輝いた。

渡部悠人は首を振り、少し呆れた様子だった。

この義弟は、矢崎粟の話題になると、まるで脳のないファンのように、もう救いようがないと思った。

矢崎粟は頷いて、「はい、以前師匠から少し習ったことがあります。今回もこの機会に少し試してみたいと思います。まだ熟練とは言えませんが」と言った。

良いものが見つかれば運が良いし、本物の骨董品が一つも買えなくても、経験として楽しめばいいと思っていた。

渡部悠人は頷き、そのまま一行を先に進ませた。

すぐに、矢崎粟は川上夕子と出会った。彼女の後ろには大勢の人々が付いていた。

川上夕子は目と経験で判断せず、ガラスに手を当てて骨董品の気配を感じ取り、完全に運気に頼っていた。

骨董品の価値が高ければ高いほど、川上夕子が感じ取れる運気も強くなり、偽物なら何も感じ取れなかった。

矢崎粟の目に暗い光が走った。

なるほど、川上夕子が毎回満足な収穫を得られるのは、このような不正な方法を使っているからだ。速くて正確な方法だった。

川上夕子の後ろには大勢の人が集まり、彼女の一挙手一投足を見つめ、川上夕子がペンを動かすと、多くの人も紙にメモを取っていた。

これらの人々も手っ取り早く、川上夕子がどの骨董品を選ぶのか見て、後で運試しをしようとしているのだろう。

しかし、矢崎粟は川上夕子が賢いことに気付いた。後ろにいる人々が彼女から骨董品の真贋を知ろうとしているのを察知し、何度も偽物の前で記録するふりをして、わざと後ろの人々を惑わせていた。

川上夕子は素早く見ていき、ガラスに手を当てた次の瞬間には鉛筆で紙に書き込めるほどだった。

本物の専門家のように細部を一つ一つ観察する必要がなかった。

そのため、川上夕子は午前中だけで骨董品オークション会場のすべての品を見終え、密封入札の用紙も提出していた。

川上夕子は非常にリラックスした表情で、勝利を確信しているようだった。このスピードは誰も追いつけないものだった。

時間が限られているため、皆は昼食に弁当を買い、オークション会場の食事エリアで食べた。食事エリアには個室があったが、追加料金が必要だった。