周囲に人が多かったため、川上夕子は心の中の不安を表に出さなかった。
彼女は入札用紙の不足している数字に従って、番号の近い骨董品を一つずつ探し、八つの数字を埋めていくしかなかった。
これが川上夕子が考えついた、損失を取り戻す最も可能性のある方法だった。
結局、以前の入札用紙には価値の高い本物の骨董品がたくさんあったので、もし運良く一つか二つ当たれば、元が取れるはずだった。
一時間半もぐずぐずしてようやく入札用紙を埋め終えた。
スタッフに促され、川上夕子は入札用紙を名残惜しそうに提出したが、どうしても心の中に不吉な予感が残っていた。
その時、川上海未も人を連れて戻ってきて、息を切らしながら言った。「四方を探し回ったが、まだ川上燕は見つからない。誰も彼女を見ていないと言っている。」
生きている人間が突然消えるなんて、あまりにも不気味だった。
川上夕子は焦りながら言った。「私が直接人を連れて探してみる。きっとどこかの隅に隠れているはず。見つけたら、ただじゃおかない。」
そう言うと、彼女は一隊の人を連れてオークション会場内を探し始めた。
すでに六時過ぎで、オークション会場の人もほとんど帰っていた。川上夕子は人を連れて至る所を探し、隅々まで探したが、やはり見つからなかった。
監視室にも行って確認し、オークション会場の出口から出て行く人々を一人一人目を凝らして見たが、やはり何も得られなかった。
川上燕が出て行く監視カメラの映像はなく、かといって会場内にもいなかった。
まったく痕跡がなかったのだ。
仕方なく、川上夕子は川上海未を呼び、オークション会場から近い交番に向かった。
川上夕子は状況を全て説明し、特に矢崎粟との揉め事について作り話を加え、矢崎粟が川上燕を誘拐したのではないかと推測し、警察に矢崎粟を呼び出して尋問するよう依頼した。
警察は当然、一方の言い分だけを信用することはなかった。
彼らはまず川上燕の個人情報を確認し、川上夕子との関係を確認した後、試しに川上燕に電話をかけてみた。
予想外にも、電話は通じた。
数言話を交わした後、警察官は困ったように川上夕子を見て言った。「通報する前に、まず本人に電話して確認しなかったんですか?本人が自分の意思で出て行ったと、電話で私に説明してくれましたよ。」