235 すれ違い

誰も同じ場所で待ってはいない、感情も同じだ。失ってしまったものは失ったまま、後悔しても無駄だ。

矢野常は目が真っ赤になり、以前の思い出が次々と蘇り、胸が刺すように痛んだ。

長年の感情がこうして取り戻せないなんて、信じられなかった。

矢崎弘は矢野常にもう一杯酒を注ぎ、感慨深げに言った。「俺たち兄弟も馬鹿だったな。昔、粟は俺たちにどれだけ優しかったか。大切にできなかった上に、あの白眼狼の美緒の味方ばかりして。今更後悔しても遅いんだ。」

時々矢崎弘は考える。もし以前の生活に戻れたら、きっと粟を大切にして、美緒に好き勝手させないようにするのに。

でも今となっては、それも叶わぬ夢だ。

矢崎粟はもう矢崎家には戻らない。矢崎弘という次男も、血のつながった友人程度の存在でしかない。

もしかしたら、友人とも呼べないかもしれない。

しばらく感慨に浸った後、矢崎弘が矢野常を見ると、まだこっそり涙を拭っていた。

矢崎弘は冗談めかして言った。「矢野常、お前といつも一緒にいるから俺も悪くなったんじゃないか?粟の良さも分からなくなって。」

そう言って、矢崎弘は深いため息をついた。

矢野常は逆に笑い出し、フルーツを投げつけながら言った。「うるさい!悪影響と言えば、お前の方が俺に与えたんだろ。お前が一番腹黒いんだから、全部お前のせいだ!」

その後、矢野常と矢崎弘は言い合いを始め、二人で適当に気持ちを発散した。

静かになってから、矢野常はまた酒を注ぎ、苦笑いしながら言った。「今、粟が俺たちを相手にしてくれないのは、全部自業自得だ。他人のせいにはできない。さあ、今夜は酔うまで飲もう!」

そう言って、矢野常はグラスを一気に飲み干した。

矢崎弘は直接ボトルを手に取り、口に運び始めた。まるで酔えないことを恐れているかのように。

矢崎泰は二人が飲み比べを始めるのを見て、しばらく座っていたが、その後立ち去り、二人の男を残して帰った。

深夜になり、二人は酔っ払いながら個室を出た。

別れた後、矢崎弘は案の定、不運に見舞われ始めた。

ホテルを出たところで、ナンバープレートのない商用車にはねられた。その車は責任追及を恐れ、アクセルを踏んで逃げてしまった。

矢崎弘は地面に倒れ、痛みで泣き叫んだ。

幸い、秘書が迎えに来ていて、血まみれの彼を見て大きく驚いた。