矢崎弘は頷いて、「実の兄弟でなければ、私は君に教えなかったよ。でも言っておくけど、この件は絶対に他人に知られてはいけない。さもないと矢崎家全体が危険な目に遭うことになる」
この件は絶対に秘密にしなければならない。
矢崎美緒の背後にいる人々に知られたら、必ず事態が悪化するだろう。
「兄さん、安心して。私は死んでも他人には話しません」矢崎政氏は力強く頷き、表情は真剣そのものだった。
なんと矢崎家は、誰かに狙われていたのだ。
だから矢崎政氏は常に自分の人生が誰かに操られているような気がしていたのだ。
矢崎政氏は矢崎美緒との付き合いの細部を思い出し、以前彼女が演技をして運気を借りようとした様子を思い出すと、背筋が凍る思いがした。
そして恐怖も感じた。
「兄さん、今この件を知っている人は何人いるんですか?」矢崎政氏は尋ねた。
まさか矢崎家で、彼ら兄弟と矢崎粟だけが知っているということはないだろう?
そうだとしたら、矢崎家はまるでまな板の上の肉のように、好き勝手にされてしまう。
矢崎弘は答えた。「粟は知っているし、長兄も知っている。私と君も知っている。他の人には誰も言っていない。矢崎若菜のようなバカに言っても信じないだろうから、とりあえず彼には言わないでおこう」
「分かりました。誰にも言いません」矢崎政氏は頷いて答えた。
矢崎政氏は矢崎美緒のことを考えた。彼女はこのような邪術を知っていて、演技も上手く、何年もの間彼らを騙し続けていた。
本当に恐ろしいことだ。
「兄さん、怖いです。次のバラエティー番組に出たくありません」矢崎政氏は泣き声を含んだ声で恐れながら言った。
矢崎美緒と向き合わなければならないと思うと、怖くてたまらない。
いつ矢崎美緒に騙されるか分からない。しかも本人は全く気付かないのだ。
矢崎弘はため息をつき、首を振って言った。「諦めるしかないよ。契約書にはもう署名したんだ。行かなければ多額の違約金を払わなければならない。それは割に合わないし、しかも警戒心を抱かせることになって、矢崎美緒の背後にいる人々に気付かれてしまう」
逃げ出すという考えは、全く現実的ではない。