ここまで話して、矢崎弘は話を終わらせようと思った。
しかし、隣の矢野常が目配せをして、噂の件について、二人が付き合っているのかどうか聞くように促した。
矢崎弘は呆れたが、それでもメッセージを打った。【粟、さっきトレンド入りしてたけど、小島一馬と付き合ってるの?】
彼は直接的に尋ねた。
もし付き合っているのなら、矢野常も諦めがつくだろう。
一方の矢崎粟は、眉を上げて返信した。【なんでそんなこと聞くの?あなたには関係ないでしょ!暇なら自分のことを心配したら?今夜の不運をどう乗り切るか考えたら?】
矢崎弘の性格からすれば、こんなことを気にかけるはずがない。
知りたくても、矢崎弘が直接彼女に聞くことはないはず。今聞いてきたということは、きっと矢野常が一緒にいるに違いない。
矢崎粟には、この二人の相手をする暇はなかった。
矢崎弘はメッセージを読むと、椅子から飛び上がって驚いて尋ねた。【粟、今夜も不運は続くの?】
その質問を見て、矢崎粟は返信する気にもならず、無視した。
矢崎弘は個室の中を行ったり来たりして焦り、頭を掻きむしった。
まずい!
粟が返信してこない。きっと怒っているに違いない。あんな質問をするべきじゃなかった。今となっては手遅れだ。
考えた末、矢崎弘は再び携帯を取り出した。【粟、ごめん。二番目の兄貴があなたのプライベートなことを聞くべきじゃなかった。怒らないで?】
謝罪の態度は悪くなかった。
矢崎粟はそれを読んで、やっと返信した。【今夜も不運は続くわ。前に矢崎若菜が経験した不運と同じことがあなたにも起こるわ。覚悟しておいて!】
どちらにしても不運は避けられない。
早いか遅いかの違いだけ。
矢崎弘はその言葉を見て、泣きたい気持ちになった。【粟、今夜法器を取りに行ってもいい?本当に不運で死にそう。今日一日の不運は、もう十分だよ。】
懇願すれば効果があることを願った。
しかし予想外にも、矢崎粟の返事は断固としていた。【ダメ、今夜は用事があるの。】
一言で断り、余地を残さなかった。
つまり、矢崎弘は自力で不運を乗り切らなければならない。一晩さえ耐えれば良い。
矢崎弘は情けない様子で返信した。【わかった。じゃあ明日朝9時に法器を取りに行くから、忘れないでね!】
明日までだけだ。きっと耐えられるはず!