265 サボってばかり

「大丈夫よ、お兄さん。私たちもここでウェイターとして働けるわ。誰にも負けないわ」と矢崎美緒は優しく言った。

彼女は小島一馬の様子を窺いながら、さらに続けた。「もう遅くなってきたわ。お金を稼いで、夜ご飯を食べられるし、泊まる場所も確保できるわ。頑張って働きましょう!」

その言葉を聞いて、小島一馬の表情はさらに暗くなった。

彼は二人に去ってほしかったが、矢崎美緒は意外と我慢強かった。

小島一馬は再び布を手に取り、二人を無視した。

矢崎若菜は怒りを抑えながら、矢崎美緒に引っ張られて端に行き、二人は何かをこそこそと話してから、店長を探しに行った。

店長は二人も番組の撮影に参加していることを知り、断らずにウェイターとして働かせることにした。

芸能人なら、ファンも多いだろう。

番組が放送されたら、多くのファンがこの店に訪れるはずで、店にとってもメリットがあった。

矢崎若菜はウェイターの制服を着て、もじもじしながら店内に入った。

何をすればいいのか分からず、やる気もなく、テーブルを片付けるように言われてもゆっくりとしか動かなかった。

小島一馬が近づき、冷たい表情で言った。「できないなら、今すぐ出て行け。番組スタッフの面目を潰すな。番組のイメージに影響を与えるぞ」

この言葉に、矢崎若菜の負けず嫌いな性格が刺激された。

彼は冷笑して言った。「安心しろ。お前より上手くやってみせる。そんなに監視するなよ」

そう言うと、矢崎若菜の動きは少し速くなり、やっと仕事らしくなった。

ライブ配信を見ている視聴者たちは、矢崎若菜の態度に失望した。

やはり大物歌手は何も仕事ができないだけでなく、アドバイスされても怒り出す始末だった。

矢崎若菜の好感度はさらに下がった。

一方、矢崎粟は手際よく化粧を施し続け、その仕上がりは効果的だった。

彼女は時計を見ると、もう4時になっていた。

列はまだまだ長く続いていた。

矢崎粟は矢崎政氏に向かって言った。「並んでいる列を止めに行って。後ろの人たちにもう並ばないように言って。この列を終わらせるだけでも日が暮れそうよ」

仕方がない、列が長すぎた。

このような対応をして、お客様の時間を無駄にしないようにするしかなかった。

「分かった、今行ってくる」矢崎政氏は笑顔で軽やかに歩いて行った。