292 軽蔑

矢崎若菜は元々むかついていたが、店員も服を選ぶのを嫌がっているのを聞いて、その怒りが一気に爆発した。「さっきは店長があなたに私たちの服を選ばせるように言ったでしょう?店長の言うことを聞かないつもりですか?」

連れてきたからには、服を選ぶのを手伝うべきだ。

それに、彼らはテレビ番組の撮影に来ているエンターテインメント界のスターで、こんな底辺の店員とは格が違う、身分はもっと上なのだ。

服を選ばせるなんて、彼女を持ち上げているようなものだ。

矢崎若菜の目に浮かぶ軽蔑の色を、麗子ははっきりと見て取った。彼女も怒りを覚え、「もし二人とも私たちの店で働きたくないなら、今すぐ出て行ってもいいわよ。ここはあなたたちが駄々をこねる場所じゃないし、私もあなたたちを甘やかすつもりはないわ」

二人とも、まだ矢崎家でお坊ちゃまお嬢様気取りでもしているつもり?

番組を見ていた時から、麗子は矢崎美緒と矢崎若菜が嫌いだったが、今彼らの人に対する態度を見て、さらに嫌悪感が増した。

番組を見ていた時、麗子は店長にも文句を言っていて、店長もこの二人に良い印象を持っていないことを知っていたので、彼らの苦情を恐れてはいなかった。

たとえ苦情を言われても、この二人のために服は選ばないつもりだ。

矢崎美緒は、この店員がこんなに気が強いとは思っていなかった。店で働き続けるために、態度を軟化させた。「ごめんなさい、お姉さん。さっきは私たち二人が悪かったわ。私、服のコーディネートの仕方がわからないの。お姉さん、助けてくれない?」

そう言って、彼女は目をパチパチさせ、目を赤くした。

しかし店員の麗子は依然として動じる様子もなく、冷たい声で言った。「私にはあなたみたいな お姫様の服のコーディネートなんてできないわ。私にはうまくできないから、ご自由にどうぞ!服とアクセサリーを選んだら、自分でメイクアップアーティストのところに行って化粧してもらってね」

少し間を置いて、彼女は続けた。「働く気があるなら残ればいいし、やる気がないなら今すぐ出て行ってもいいわよ」

そう言うと、麗子は背を向けて出て行った。

もうこの二人とは関わりたくなかった。番組のスタッフがこの二人を嫌うのも無理はない。

お坊ちゃまお嬢様の態度で、店で働きに来るなんて、まったく笑止千万だ。