皆は時間を無駄にせず、馬選び場へと足早に向かった。
ここの馬は一頭一頭が逞しく、気性も荒い。もし気の荒い馬を選んで手なずけられなければ、選び直さなければならない。
馬選び場に着くと、小島一馬は馬を見ずに、期待に満ちた表情で矢崎粟を見つめた。「粟、僕の分も馬を選んでくれないかな?」
矢崎粟は「選べないの?」と尋ねた。
現場には多くの馬がいて、目移りしやすい。一般の人なら本当に分からないかもしれない。
小島一馬は笑顔で「僕は粟の実力を信じているんだ。粟が選んでくれる馬は、きっと最高の馬だと思うから」と言った。
「いいわ、選んであげる」矢崎粟は頷いて承諾し、目の前の馬たちを一頭ずつ見渡した。
小島一馬は目を輝かせ、矢崎粟の動きを目で追いながら、恋する表情を浮かべていた。
小島一馬のその様子に、小島家の人々は思わず顔を覆い、もう見ていられなかった。
あの様子を見てみろ、まるでストーカーのよう。かつての小島家の若き王者の面影はどこにもない。
小島茜音は大笑いしながら「まさか一馬がこんな一面を持っているなんて思わなかったわ。あの様子じゃ、トップスターには見えないわね」と言った。
彼女はスマートフォンを手に持ち、画面上のコメントが飛ぶように流れていた。
視聴者たちも小島一馬をからかい、もう少し控えめにしないと粟を逃がしてしまうぞと言っていた。
傍らにいた従兄の小島金武は頭を掻きながら、困惑した様子で「確か、小島家の子供は12歳になると、家から専門の先生をつけて乗馬を習うはずだよね。うちの馬場だって世界トップクラスなのに、一馬が馬を選べないなんてありえないだろう?」と言った。
どう考えてもおかしい。
でも小島一馬に嘘をつく理由もない。もしかして本当に単に矢崎粟に馬を選んでもらいたいだけなのか?
小島茜音は小島金武を睨みつけ、呆れた様子で「本当に鈍いわね!一馬がこうするのには理由があるのよ。粟に馬を選んでもらわなければ、どうやって粟を褒めちぎるモードに入るのよ?」と言った。
「そういうことか。一馬は本気なんだな、女の子を追いかけるのにこんなに心を砕くなんて、すごいよ!」恋愛に関して、小島金武は全く才能がなかった。
彼らのような家庭に生まれると、女性を追いかけるのは簡単すぎる。