321 運気が流れ続ける

主催者側は医療費の支出に責任を負わず、この事件についても一切の責任を負いません。

矢崎美緒は主催者側の発表を聞き終わると、大股で歩み寄り、「納得できません。これは明らかにあなたたちの会場で起きた事故で、試合もあなたたちが主催したものなのに、どうして一切責任がないと言えるのですか?」

主催者側はスーツを着た男性を派遣し、矢崎美緒と交渉させました。

彼は皆に弁護士証を見せ、自己紹介をしました。主催者側の法務担当、澤田彰人でした。

続いて、澤田は矢崎美緒と矢崎若菜が署名した安全責任誓約書を手に取りました。

「誓約書には明確に記載されており、お二人とも署名されています。矢崎さんもご記憶のはずですよね?」弁護士は微笑みながら言いました。

矢崎美緒は深く息を吸い込み、なお強情に言い返しました。「それがどうしたというのです?」

「協定書の規定によると、人の主観的な意図による怪我の場合、加害者が責任を負うことになっており、アーチェリー大会主催者側は一切の責任を負いません。」

澤田はカメラの前で手元の協定書を示しました。

矢崎美緒は唇を噛みながら、冷たい声で言いました。「あなたたちが賠償を拒むなら、矢崎家の法務部と話し合ってもらうしかありませんね!」

彼女は心の中で、この件は自分の過ちだと分かっていましたが、だからといって主催者側が医療費を負担しないでいいという理由にはなりません。矢崎家の法務部が相手側と裁判を起こせば、勝訴の可能性はあるはずでした。

今、大勢の目の前で、矢崎美緒は引き下がるつもりはありませんでした。

その言葉が落ちるや否や、小島一馬は嘲笑うように言いました。「矢崎美緒、あなたが矢崎家の法務部を動かせると思っているの?そんな資格があると思っているの?」

養女であることはさておき、矢崎家の法務部が彼女を助けてくれるかどうかも分かりません。

矢崎若菜を傷つけたこの件で、矢崎家の人々が彼女を恨まないだけでも難しいのに、矢崎家の法務部に助けを求めるなんて、夢物語でしょう!

澤田は穏やかな笑みを保ちながら、一字一句はっきりと言いました。「また、主催者側は、大会期間中、矢崎美緒さんが複数回にわたり故意に他人を傷つけ、大会の秩序を乱したとして、矢崎美緒さんの責任を追及し、訴訟を提起することを宣言します!」