322 傷口に塩を振りかける

藤田川は口角を密かに上げ、軽く笑った。

彼だけが知っていた。矢崎粟が行ったのは矢崎若菜を見舞うためではなく、彼女の傷口に塩を振りかけるような辛い事実を伝えるためだった。

これは本当に面白いことだ!

小島一馬も同調して言った。「確かに矢崎若菜を見舞いに行くべきですね。同じ番組のメンバーとして、特に矢崎美緒は。」

彼は矢崎美緒を見て、笑いながら言った。「お兄さんはあなたにこんなに優しいのだから、見舞いに行くべきですよ。でも、矢崎若菜はあなたに会いたくないでしょうね。自分で決めてください!」

小島一馬の言葉で、話題は再び矢崎美緒に向けられた。

カメラは矢崎美緒に向けられ、彼女の後ろめたそうな表情をはっきりと捉えた。

彼女はさっきまで訴訟のことばかり考えていて、矢崎若菜が怪我をしたことも、病院に見舞いに行くことも忘れていた。

病院への見舞いを矢崎粟に先に言われてしまい、矢崎美緒は心の中で呪った。

この矢崎粟は本当に良い人を演じるのが上手で、わざと自分をアピールしている。

小島一馬はもっと嫌な奴だ!

わざと話題を彼女に向けて、みんなの注目を集めようとしている。彼女を困らせようとしているのだ。

矢崎美緒は素早く心配そうな表情に切り替え、ため息をつきながら言った。「本当は番組が終わったらすぐに三兄を見舞いに行こうと思っていたんです。矢崎粟さんが先に言い出すとは思いませんでした。それなら、みんなで一緒に行きましょう!」

これらの言葉は、ただ病院にいる矢崎若菜のことを忘れていなかったことを証明するためだった。

彼女が見舞いを提案しなかったのは、番組終了後に一人で行くつもりだったからだと。

矢野常は冷笑して言った。「本当に心配なら、さっき救急車に同乗して、最後まで矢崎若菜の治療に付き添うべきだった。ここでこんなに長く騒いでから、やっと三兄を見舞うべきだと気づくなんて。」

矢崎美緒の嘘は、このように露骨に暴かれた。矢野常は彼女に一切の情けをかけなかった。

この時、矢野常は矢崎美緒に対して新たな認識を持ち、さらに嫌悪感を覚えた。

これまでは、矢崎美緒が計算高く、矢崎家の兄弟たちを利用し、演技が好きで、他人を馬鹿にしているだけだと思っていた。それ以外は特に悪意はないと思っていた。

今、彼は深く理解した。矢崎美緒の心がいかに毒々しいかを。