322 傷口に塩を振りかける

藤田川は口角を密かに上げ、軽く笑った。

彼だけが知っていた。矢崎粟が行ったのは矢崎若菜を見舞うためではなく、彼女の傷口に塩を振りかけるような辛い事実を伝えるためだった。

これは本当に面白いことだ!

小島一馬も同調して言った。「確かに矢崎若菜を見舞いに行くべきですね。同じ番組のメンバーとして、特に矢崎美緒は。」

彼は矢崎美緒を見て、笑いながら言った。「お兄さんはあなたにこんなに優しいのだから、見舞いに行くべきですよ。でも、矢崎若菜はあなたに会いたくないでしょうね。自分で決めてください!」

小島一馬の言葉で、話題は再び矢崎美緒に向けられた。

カメラは矢崎美緒に向けられ、彼女の後ろめたそうな表情をはっきりと捉えた。

彼女はさっきまで訴訟のことばかり考えていて、矢崎若菜が怪我をしたことも、病院に見舞いに行くことも忘れていた。