「さっきの動きはカメラにはっきりと映っていたわ。あなたの言い訳を誰が信じると思うの?あなたが矢崎若菜を盾にしなければ、彼女は怪我をしなかったはずよ」と矢崎粟は冷たい声で言った。
そう言い終わると、彼女は矢崎美緒に構わず、馬から降りて審判席へと真っ直ぐに向かった。
矢崎粟は審判に、矢崎美緒が何度も弓で相手の馬を叩いていたと報告した。審判たちは厳密に調査し、先ほどの映像を再生して両者の責任を判定すべきで、見て見ぬふりはできないと。
矢崎粟の話が終わると、観客席から怒号が沸き起こった。
「矢崎美緒を厳罰に処し、アーチェリー場の公平さを取り戻せ!」
「矢崎美緒の責任を追及しろ!」
「減点!減点!」
「矢崎美緒は反則、アーチェリー場から追放すべきだ!」
審判は周囲の観客席を見上げた。四方八方から声が響き、その勢いは凄まじかった。
ライブ配信の視聴者たちも矢崎美緒の厚かましさに驚愕していた。
試合の全過程はカメラに収められており、矢崎美緒の一つ一つの動作が高画質で映っていた。リプレイを見れば、彼女のすべての細かい動きがはっきりと確認できる。
そんな状況でも、矢崎美緒は責任逃れをしようとしていた。
視聴者たちは競技の主催者に電話をかけまくり、この件を公正に処理し、矢崎美緒にアーチェリー競技の風紀を乱させないよう要求した。
主催者の公衆電話は鳴り止まず、かける人が次々と続いた。
主催者側が公平な処理を約束しても、観客たちの怒りは収まらなかった。
大勢の観客が矢崎美緒の個人アカウントに押し寄せ、彼女の行為を非難し始めた。矢崎グループも非難を免れることはできなかった。
多くの人々が企業の公式アカウントに押し寄せ、矢崎家の者はどのように矢崎美緒を教育してきたのかと詰問した。
この一連の出来事で、観客たちは矢崎美緒をトレンド入りさせた。
矢崎美緒の話題には、「恥知らず」「厚顔無恥」「破廉恥」などの否定的な評価が多く付けられた。
要するに、ネット上では矢崎美緒の名前が出る投稿は全て、観客たちによって非難の的となった。
矢崎邸にて。
矢崎おじい様もライブ配信を見ていた。
矢崎若菜が怪我をする場面を見て、おじい様は机の上の茶碗を激しく床に叩きつけ、顔色を変えた。