310 偶然ではない

田中凛は黙って付け加えた。「本当に偶然ですね。私たちのチームと矢崎美緒のチームが決勝で出会うなんて。」

そう言いながらも、彼女の心の中では、これは誰かが周到に計画したものだと薄々感じていた。

矢崎粟も考え込みながら、矢崎美緒のチームの方を見つめていた。

明らかに、これは偶然ではなかった。

アーチェリー大会は予選後、三十二チームが残ったが、矢崎粟のチームと矢崎美緒のチームは最後まで対戦することがなかった。おそらく誰かが抽選で手を加え、わざと二つのチームを決勝戦で対戦させるようにしたのだろう。

不正工作は珍しくないが、矢崎粟が疑問に思ったのは、ここは中華街であり、道家協会の管轄下にある場所だということだった。

背後にいる人物が、ここで不正を働けるとは!

それは即ち、背後にいる人物の勢力が広範囲に及び、道家協会内部にも内通者がいるということを意味していた。