300 三兄が一番大好き

翌日の朝八時。

矢崎美緒は矢崎若菜の部屋のドアをノックし、ドアが開くと「お兄ちゃん、おはよう!」と挨拶した。

「おはよう。どうしてこんなに早く起きたの?」矢崎若菜は目をこすりながら尋ねた。

昨日グループで話し合ったように、今日は九時半に集合だから、もう少し寝ていられるはずだった。まだ起きる時間じゃないのに!

矢崎美緒は笑顔で朝食を差し出し、「お兄ちゃん、朝ご飯を食べてからまた寝てね。そうすれば後で買いに行かなくていいから」

「ありがとう、妹!」矢崎若菜は笑顔で朝食を受け取った。

続いて、矢崎美緒は笑顔で言った。「前にネックレスをくれた友達が玉仏もくれたの。吉祥の気があって、厄運を抑えられるって。お兄ちゃんは今日の試合の主力だから、きっと役に立つと思って」

矢崎若菜は嬉しそうな表情を浮かべた。

彼は玉仏を受け取り、手で丁寧に触れた。

しかし何かを思い出したように、玉仏を矢崎美緒に返そうとした。

矢崎若菜は言った。「美緒、僕はもうネックレスを持ってるから、この玉仏は君が身につけていた方がいいよ。そうすれば君も悪い運気を防げるし、試合も楽になるから」

彼は本当に矢崎美緒のことを考えて、今日が順調に進むことを願っていた。

しかし矢崎美緒は内心とても苛立っていた。この矢崎若菜はなんてグズグズしているのだろう、時間の無駄だと。

ものを渡すだけなのに、なんでこんなにごちゃごちゃするの?うんざりだわ。

心の中ではそう思いながらも、笑顔で言った。「私は大丈夫よ、お兄ちゃんこそ試合の主力なんだから、お兄ちゃんが身につけるべきよ!お兄ちゃんは実力が強いから、試合で私を守ってほしいの」

この言葉を聞いて、矢崎若菜は非常に感動した。

彼は力強くうなずいた。「安心して、今日は絶対にいい演技をするよ。試合中は必ず君をしっかり守るからね!」

矢崎若菜の声色は重く、表情も真剣だった。

矢崎美緒はより一層明るく笑った。

彼女は前に出て矢崎若菜を抱きしめようとしたが、今はホテルの廊下で、時々人が通るので、また写真を撮られたら面倒だと思い直した。

矢崎美緒は我慢して、代わりに矢崎若菜の手をしっかりと握った。

「お兄ちゃんは最高!私の一番好きな兄弟はお兄ちゃんよ」矢崎美緒は無邪気に言った。

彼女は決めた。今夜、玉仏を取り返そう。