矢崎昌氏は暗い表情で、悔しそうに言った。「藤田大師に見てもらいましたが、時間がないと言われ、予定が空くまで儀式はできないそうです。」
この時になって、やっと藤田大師の実力がどれほど強いのかを実感した。
なるほど、藤田大師が断り、矢崎家の者に予約を取るように言ったわけだ。
竜田道士は目を輝かせ、笑いながら言った。「藤田大師が承諾してくれたのなら、じっと待つしかありませんよ!藤田大師に会えるだけでも非常に幸運です。普通の人は大師に一度会うことさえ難しいのですから。」
澤田道士もうなずきながら、「そうです。藤田大師は静寂を好み、めったに人に会わないのです。」
矢崎昌氏はため息をつき、ただうなずくしかなかった。
粟の顔を立てなければ、おそらく藤田大師は手助けを承諾しなかっただろう。
彼は矢崎若菜を見て、冷たい声で言った。「妹がいなければ、お前は藤田大師に会うこともできなかった。大師は彼女の面子を立てて助けることを承諾したんだ。感謝することを忘れるな。」
矢崎若菜は賢くないので、矢崎昌氏は言わなければ、若菜は一生理解できないだろうと心配した。
子育てについて、二人の老人は基本的に関与しなかった。
二人は粟が家でそれほどの辛い思いをしていたことを知らず、知った時には既に粟が家族との関係を断ち切ったという知らせを受けていた。
その時には、もう遅かった。
彼らにも粟を引き止める面目はなかった。
今になって考えると、彼らは後悔してもしきれなかった。もし粟がまだ矢崎家にいれば、この苦難はすべて解決していただろう。
矢崎若菜は二人の道士が来たことで、自分にも救いがあると思い、希望を持った。
しかし道士の話を聞いて、絶望的になった。
彼にかけられた呪術は普通の道士では解けないということは、しばらくの間は呪術を解くことができないということだ。
彼はまだ何日も、あるいは何ヶ月も不運に見舞われることになる。
矢崎若菜は呟いた。「後悔しています。あの時、粟を疎外するべきではありませんでした。私は良い兄になれませんでした。」
矢崎美緒は本質的に冷淡で利己的で、何か起これば本能的に自分を守ろうとする。
彼の美緒への愛情は、自分の顔を平手打ちするようなものだった。
粟は表面上冷たく見えたが、最も頼りになる人物だった。