336 矢崎粟のために腹を立てる

矢崎粟と藤田川は目を合わせ、一緒に退出の挨拶をした。

病室を出ると、矢崎粟は口を開いた。「先輩、お祓いをしたくないのは、矢崎美緒に苦しんでほしくないからですか?」

藤田川は一瞬驚いて、笑いながら言った。「そんなはずないでしょう?」

「では、先輩はどういうお考えなのですか?」矢崎粟は尋ねた。

二人とも玄学師であり、矢崎粟は当然気づいていた。藤田川は本当に時間がないわけではなく、矢崎若菜のためのお祓いをしたくないのだと。

その理由を、矢崎粟はとても知りたかった。

藤田川は笑いながら首を振った。「妹よ、私はあなたの代わりに仕返ししているんですよ。あなたは矢崎若菜が嫌いでしょう?厄運を解除しなければ、彼女はもっと苦しむことになりますからね。」

二人は馬車を呼び、一緒にホテルへ戻った。

車中で、矢崎粟は尋ねた。「先輩、通報した後、矢崎美緒は罰を受けることになると思いますか?」

藤田川はしばらく考えてから言った。「罰は受けるかもしれませんが、重くはないでしょう。結局、彼女は玄学師とは言えませんからね。追及すべき人物は、彼女の背後にいる玄学師です。」

矢崎粟は頷いた。「関係部署は矢崎美緒の背後にいる玄学師を見つけられると思いますか?」

背後の人物は必ず深く隠れており、権力と影響力を持ち、情報を確実に得られる立場にいるはずだ。

「あなたはどう思いますか?」藤田川は笑いながら、逆に尋ねた。

彼は矢崎粟がどう考えるのか、とても興味があった。

矢崎粟は言った。「その人物は恐らく見つからないと思います。たとえ見つかったとしても、その玄学師の身代わりに過ぎないでしょう。」

この件を利用して背後の人物を突き止めることは不可能だろう。

しかし、探りを入れて背後の人物の実力を確かめることは、悪くない試みだ。

藤田川は目を閉じ、感知した後、続けて言った。「今回は、本当に誰かが矢崎美緒のために身代わりを見つけたようです。彼女はすべての責任をその人物に押し付け、むしろ無事に逃れることができるでしょう。」

彼はすでにすべての出来事を予知していた。

ただし、これも五級大円満に達してこそ持てる能力だ。

今回の件で矢崎美緒はそれほど苦しまなかった。矢崎粟はこの答えを聞いても、特に驚かなかった。