340 矢崎粟は法器を持っている

矢崎昌氏は険しい顔をして、口を開いた。「矢崎家の管理を任せたのに、家全体がめちゃくちゃになって、実の息子が養女にいじめられて死にそうだ。」

彼は本当に理解できなかった。なぜ二人はそれほどまでに矢崎美緒を可愛がるのか。

今になっても、矢崎美緒との養子縁組を解消しようとしない。

「お父様のご指摘の通りです。」小林美登里も恭しく近寄り、すぐに同意した。

その時、看護師が矢崎若菜にお粥を食べさせており、矢崎若菜は小さな口で少しずつ食べ物を飲み込んでいた。

突然、彼の鼻がむずがゆくなり、くしゃみをして、柔らかく煮たお粥が気管に入ってしまった。

矢崎若菜は呆然とし、再び詰まってしまった。

激しく咳き込み、体が震え、顔全体が紫色になり、まだ息を整えられないでいた。

看護師は死ぬほど驚き、急いで前に出て、矢崎若菜の背中を叩こうとした。

矢崎若菜は背中の肋骨も一本折れており、背中の手術を終えたばかりだったため、看護師にそのように叩かれ、痛みで悲鳴を上げた。

矢崎若菜はベッドの上で暴れ、大きく息を吸った。

この様子に、小林美登里は顔が真っ青になり、その場で動けなくなった。

矢崎若菜は頭を上下に揺らし、喉から荒い息遣いを漏らし、数秒後にようやく気管に入ったお粥を吐き出した。

激しい動きで、頭の傷口からまた血が流れ始めた。

矢崎若菜は力なくベッドに横たわり、両手を垂らし、虚ろな目で小林美登里と矢崎正宗を見つめ、「死なせてくれた方がましだ。本当に辛いよ、お父さん!お母さん!体中が痛い。」

言葉が終わらないうちに、目から涙が落ちた。

小林美登里は駆け寄り、矢崎若菜を抱きしめ、泣きながら言った。「かわいそうな子、どれだけ苦しんでいるの。怖がらないで、ママがここにいるわ。」

矢崎若菜はもう何も言わず、ただ涙を流し続けた。

この感覚は、本当に耐え難かった。

体の激しい痛みに耐えなければならないだけでなく、数時間おきに訪れる不運にも耐えなければならず、毎回の不運で半死半生の状態に追い込まれた。

この時の矢崎若菜は矢崎美緒を骨の髄まで憎んでおり、もし矢崎美緒が病室にいたら、必ずボディーガードに矢崎美緒を殴らせて鬱憤を晴らすつもりだった。