三十分後、矢野寿は助手から一通の電子メールを受け取った。
資料を確認すると、口座の所有者は呪術を得意とする人物だと分かった。
資料には詳しく書かれていた。彼は南西地方で有名な呪術王だが、その行動様式は地元の人々に嫌われていた。
誰もが知っていた。彼は金持ちのために悪事を働くことが多いということを。
民間では、南西の呪術王が南西地方全体を混乱に陥れ、大きな動揺をもたらすという噂が広がっていた。
矢野寿は資料を読み終えると、不吉な予感を感じた。
しかし、完全には確信が持てなかった。
そこで、とりあえず矢野常に電話をかけ、母親をよく見ていて、罪のない人々を害することがないよう注意するように伝えた。
同時に、矢野寿は自分の推測を話した。
澤蘭子が呪術師を探したのは矢崎粟に対抗するためで、すでに行動を起こしているのではないかと疑っていた。
矢野常はそれを聞いて、何となく不安を感じた。
電話を切るとすぐに、矢崎粟を探しに出かけた。
一方、電話の向こう側で、矢野寿は暗い表情で床から天井までの窓の前に立ち、下の車の流れを見つめていた。
彼は非常に失望していた。
これまでの年月、自分は澤蘭子の一家に良くしてきたつもりだった。
澤家が会社を設立した時、スポンサーを集め、投資に関する多くの問題を解決してやった。
見返りを求めたことは一度もなかった。
しかし結局、澤家は矢野家の名を利用して、裏で多くの悪事を働いていた。
澤家の連中全員が刑務所に入って、自分の前から消えてくれればいいと思った。
……
矢野常は全身を武装し、マスクと帽子で自分をしっかりと包み隠してから、矢崎粟を探しに出かけた。
彼女がまだ以前と同じホテルに滞在していることを知っていた。
矢野常が数本の路地を歩いたところで、道家協会の近くで見覚えのある顔を見かけた。
矢崎美緒が路地から怪しげに出てきて、キャップを被っていた。
その顔ははっきりと外に露出していた。
矢野常はよく見て、その人物が間違いなく矢崎美緒だと確信した。
しかし、以前の矢崎美緒とは違っていた。目の前の矢崎美緒は十数歳年を取ったように見え、帽子の下から覗く髪には白髪が混じっていた。
彼女の顔は黒ずんで黄ばみ、目尻には何本もの皺があった。
瞳までも濁っていた。