387 呪術の始まり(387章)

矢崎粟が振り返って立ち去ろうとした時、中庭の門まで来たところで、藤田川の声が漂ってきた。

「お前の師匠の玉壁を、多くの者が狙っている。この数日、南西の呪術王が中華街に入って、矢野夫人と密接に連絡を取っているようだ。おそらくお前を狙っているだろう。これからは気をつけろ」

矢崎粟は振り返って、笑みを浮かべた。「はい、分かりました!」

そう言うと、大股で中庭を後にした。道中、彼女の足取りは随分と軽くなっていた。

青い空を見上げた。どうやら、嵐が近づいているようだ。準備をしなければならない。

ホテルの部屋に戻ると、矢崎粟は多くの古文書を調べ始めた。

黄色い蝋燭を取り出し、その炎の下で様々な符紙を描き始めた。

一方、中華街の南西の角にあるホテルでは。

516号室。

呪術師は木箱を取り出し、中には黒くて太い虫が入っていた。

虫は十八本の足を持ち、頭の上にはカタツムリのような触角があり、体には粗い皺が刻まれていた。

呪術師の前のテーブルには、かかしが置かれていた。

かかしの顔には、一枚の紙が貼られていた。

紙には矢崎粟の顔が印刷されており、かかしの首には一本の髪の毛が巻き付けられていた。

呪術師は細い針で自分の指を刺した。

そして、その血をかかしの頭頂部に塗り、頭全体が赤褐色になるまで続けた。

呪術師は得意げに笑うと、朱砂筆を取り出してかかしの四肢に鎖を描いた。

最後に、かかしの腹を裂き、箱の中の呪虫をかかしの腹の中に入れた。

呪虫は必死にもがきながら、かかしの腹の中へと潜り込んでいった。

呪術師は呪文を唱え、両手を素早く動かした。

かかしは生き返ったかのように激しく暴れ、頭部も震えていた。

しばらくして、呪術師はかかしの腹に藁を詰め、縄で縛り上げた。

呪虫はうまくかかしの腹の中に入り込んだ。

ある中庭で。

西側の部屋で、矢崎美緒は窓際に座り、くつろいで果物を食べていた。

突然、彼女の手が止まり、四肢の力が抜けた。

手首と足首に奇妙な拘束感があり、まるで鎖で縛られているかのようだった。

矢崎美緒は驚いて立ち上がり、手首を見た。

しかし、異常は見当たらなかった。

そして、お腹の中で何かが噛み付いているような感覚があり、五臓六腑が痛んだ。

特に心臓の辺りは、噛みちぎられたかのように痛み、息ができないほどだった。