402 特製の香袋

矢崎正宗は冷たい表情で、冷ややかな声で言った。「彼女は私が呼んだんだ。何か文句があるのか?」

澤蘭子は病室内を何度も見回し、最後に藤田川だけが部外者だと気づき、心の中で納得した。

どうやら、探していた人物は彼のようだ!

小林美登里は不満げに言った。「私は矢崎家の夫人として、外来の客について尋ねることもダメなの?」

矢崎正宗は厳しい表情で、「むしろ私が聞きたいのは、なぜ彼女を連れてきたんだ?」

彼は妻が澤蘭子と接触することを望んでいなかったのに、小林美登里はその人を病室まで連れてきてしまった。

小林美登里は眉をひそめ、「矢野夫人が三男を見舞いたいと言ったの。これも思いやりじゃない」

その話題が出ると、澤蘭子は笑顔を作って、「そうよ、ただ見舞いに来ただけよ」

矢崎正宗は冷たい目で二人を見つめたが、何も言わなかった。

矢崎若菜は嫌そうに言った。「矢野夫人の来訪は歓迎しません。お帰りください!」

この矢野夫人が来たのは、きっと何か企んでいるに違いない。

彼女は息子のために、まず他人を雇って粟の屋台を壊させ、その後呪術王を雇って矢崎粟に呪いをかけさせた。そんな悪事を働いておいて、まだ見舞いに来る顔があるのか?

小林美登里は怒りで胸を震わせながら、「この生意気な子!本当に礼儀知らずね。矢野夫人がわざわざ見舞いに来てくださったのは、あなたに面子を立ててくださっているのよ!」

矢崎若菜は顔をそむけ、「誰が彼女の悪意を知るものか」

皆が言い争うのを見て、矢崎粟は平然とした表情で藤田川に言った。「行きましょう」

藤田川は頷いた。

そして、二人は出口へ向かって歩き出した。

矢崎正宗は後ろについて行きながら、小林美登里を厳しく睨みつけ、「余計なことを言うな。三男の病気が治ったばかりだ」

小林美登里は荒い息を吐きながら、不満げな表情を浮かべた。

矢崎粟が澤蘭子とすれ違う時、異様な香りを嗅ぎ取った。その中に見覚えのある香料が含まれていた。

彼女は澤蘭子の腰に下げられた香袋を一瞥し、嘲笑的な笑みを浮かべた。

その香袋には、人を害する香料がたくさん入っていた。

矢崎粟は意識を使って、香袋に凶気を付着させた。それを済ませると、大股で病室を出た。

小林美登里は三人が出て行くのを見て、ドアを乱暴に閉めた。