415 東京へ避難する

矢崎若菜は提案した。「お母さん、早く帰った方がいいわ。ここには政氏とお父さんがいるから大丈夫。呪術師にやられるのが心配だから」

中華街では、矢崎家の基盤は浅すぎた。

何か起きても、すぐに援助を得ることは難しい。

東京に戻ってからの方が安全だ。

小林美登里は呪いにかかって老けて醜くなることを考えると、少し動揺した。

しかし、澤蘭子がネット上で彼女を中傷する動画を投稿し、さらに呪術師を使って彼女を害そうとしたことを思い出すと、また怒りが込み上げてきた。

彼女は矢崎政氏を見て、冷たい表情で言った。「政氏、午後に撮った動画を私に送って。使いたいの!」

必ず仕返しをしてやる。

矢崎政氏は父親を見て、父親が頷くのを確認してから、「分かった、今すぐ送る」と言った。

小林美登里は動画を受け取るとすぐに助手に送った。

彼女は助手に前半の会話部分を全てカットし、後半の二人が喧嘩している部分だけを残すように指示した。

矢崎粟が害された事実が公になれば、事態はさらに大きくなり、収拾がつかなくなるだろう。

それは小林美登里の望むところではなかった。

助手は一度ラフカットしてから、配下のある制作会社に動画を送った。

その制作会社は数百のマーケティングアカウントと多くの水軍を運営しており、確実に仕事をこなし、矢野夫人を徹底的に中傷することを約束した。

小林美登里はこれらの作業を終えた後、兄の小林悠一に電話をかけた。

電話が繋がると、彼女の最初の言葉は「私、いじめられたの...」だった。

小林悠一は緊張した様子で尋ねた。「誰がいじめたんだ?矢崎正宗のやつか?兄さんに言えば、ぶん殴ってやるぞ!」

小林美登里は家族の末っ子だった。

兄として、幼い頃から最も可愛がっていたのが小林美登里だった。

前回、小林美登里が頭が混乱して殺人犯を助けてくれと頼んできた時も、兄は愛情ゆえに妹を叱りつけただけだった。

しかしそれは小林美登里を可愛がっていないということではない。

むしろ可愛がっているからこそ、小林美登里が間違いを犯して、弱みを握られることを許せなかったのだ。

その後、小林美登里は矢野夫人の所業について話し、さらに脚色を加えて説明した。それを聞いた小林悠一は激怒した。