矢崎粟は一人で行動するのは危険すぎる。
川上夕子の一件があって、川上燕は確信した。背後にいる者は必ず矢崎粟に目をつけており、矢崎粟に手を出す可能性が極めて高い。
矢崎粟は少し笑って、「大丈夫よ、私は怖くないわ。もし向こうが来るなら、私が倒してやる」と言った。
以前の彼女なら、こんな言葉は言えなかった。
しかし今は、彼女も大円満の境地に達し、実力は以前とは比べものにならないほど高くなっていた。
さらに藤田川と合わせれば、二人の実力はきっとあの者と対抗できるはずだ。
矢崎粟はさらに尋ねた。「川上家の者があなたに写真を送ってきた意図は何?」
以前なら、川上家の者は決して川上燕に時間を費やすことはなかった。
川上燕は冷笑して、皮肉を込めて言った。「川上夕子が骨董品を鑑定する能力を失ってから、彼らは私に期待を寄せるようになったの。私を川上家に戻して、川上家のために働かせたいみたい」
そんなの嫌だわ!
外で快適に暮らしているのに、なぜ家に戻って虐められなければならないの?
矢崎粟は言った。「あなた自身で決めればいいわ。自分が何を好きで、どんな生活を送りたいのか。もし川上家に戻りたいなら、私も支持するわ」
川上燕が川上家に戻っても、もう虐められることはないはずだ。
矢崎粟の見えないところで、川上燕は涙を浮かべ、落ちる涙を手で拭った。「ありがとう、粟さん。あなたに出会えて私は幸せです」
彼女は、矢崎粟がずっと無事でいることを願っていた。
矢崎粟は笑って、「あなたと出会えたのも私たちの縁よ。自分で努力してこそ、望む生活を送れるのよ」と言った。
彼女はただ道を示しただけで、その道を歩むかどうか、どれだけ歩めるかは、すべて川上燕次第だった。
続けて、矢崎粟は言った。「その写真を私に送ってくれない?私も見てみたいわ。何か分かるかもしれないから」
川上燕は「はい、では失礼します。さようなら」と答えた。
二人は電話を切った。
すぐに、川上燕は写真を送ってきた。
矢崎粟はその写真を拡大した。写真の人物はロープで吊るされており、足先の向き、体の反応、すべてが自殺であることを証明していた。
他人に絞殺されたのではない。
しかし矢崎粟は、事態がそう単純ではないと感じた。