二人はこの奇妙な屋敷に入ると、冷たい風が吹き抜けるのを感じ、不吉な予感がして、あたりを見回す勇気もなかった。
矢崎美緒は今朝この山に連れて来られた。
竜田実子は彼女に、若返りたいなら、まずある場所に行かなければならないと告げ、矢崎美緒は二つ返事で承諾した。
この山頂に着いてから、矢崎美緒は何かがおかしいと感じ始めた。
ここはいたるところに巡回する人々がおり、厳重な警備が敷かれていた。
周囲は極めて静かで、鳥の声一つ聞こえず、不気味な雰囲気が漂っていた。
巡回している人々も皆無言で、それぞれが仮面をつけ、黒い体にぴったりとした服を着て、まるでいつでも戦闘態勢に入れるかのようだった。
竜田実子は二人を連れて来た後、老人に一礼して出て行った。
老人は二人に微笑みかけ、年老いた声で「座りなさい。私は他人ではないから、安心して」と言った。
彼は木のテーブルの前に座っており、テーブルの脇には二つの座布団があり、矢崎美緒たち二人のために用意されていた。
二人は慎重に近づき、膝を曲げて座り、頭を下げたまま老人を見る勇気もなく、何か不測の事態が起きるのではないかと恐れていた。
老人は二人をじっくりと観察し、最後に満足げに頷いた。
さすが自分の孫娘たちだけあって、容姿は申し分なく、どちらも美しく育っている。ただ、少し臆病すぎるようだ。
彼が特別に中華街を出て、近くの山で修行しているのは、藤田川を避けるためだった。
彼は知っていた。藤田川は中華街内のすべての法力の波動を感知できる。まるで監視カメラのようだ。
そのため、秘術を使用する際は必ずこの山に来ていた。
この山を、彼は明徳山と名付けた。
川上夕子は老人が彼女たちを見ていることに気付き、こっそりと顔を上げて老人を見た。
彼女は気付いた。この老人は黒い道服を着て、髪は乱れ、目は濁り、顔には多くの皺があり、六、七十歳くらいに見えた。
老人の目つきには残忍さと冷酷さが宿っていた。
川上夕子の直感は、この人物は手ごわい相手だと告げていた。
老人は大きく笑い、「この数日、お前たちは元気にしていたかな?うまくいっているかな?」と尋ねた。
この言葉に、矢崎美緒は頭を下げ、落ち込んだ表情を見せた。
この数日間、彼女は部屋に閉じこもったままで、まるで牢獄にいるようだった。