436 彼女の仕掛けた罠

澤蘭子は彼に呪術をかけるように頼んだ。

もし彼女が髪と血液を取り替えていなければ、呪術にかかったのは彼女自身だったはずだ。

呪術王は少し驚いて、「お前が知っていたのか?」

その後、彼は首を振り、ため息をつきながら言った。「なるほど、矢崎美緒が呪術にかかったわけだ。美緒が愚かだと思っていたが、お前の仕掛けだったとは!」

彼女は彼が矢野夫人に呪術をかけたことを知っていた。

しかし、彼が矢崎夫人にも呪術をかけたことは知らないはずだ。

そう考えると、呪術王は再び喜んで、にやにやしながら言った。「だがお前が知らないのは、私がもう一つ呪術をかけたことだ。お前の実の母親にな。もし解毒術を望むなら、私のために一つのことをしてもらおう。」

彼を逮捕させた犯人が矢崎粟だと気づいてから、彼の心にある考えが浮かんでいた。

矢崎夫人にかけた呪術を使って、矢崎粟を脅そうとしていたのだ。

矢崎粟は笑って、無関心な表情で言った。「よくやったわね。私は彼女に苦しみを味わってほしいと思っていたの。知らなかったの?私はずっと母とは仲が悪かったのよ?」

呪術王はそれを本当に知らなかった。

彼は呪術の研究に没頭していて、あの番組を見たのも矢崎粟の顔を覚えて呪術をかけるためだけだった。

呪術王は落胆した表情を見せながらも、矢崎粟の言葉が嘘であることを願って、「冗談で言っているんだろう?実の母親なのに、どうしてそんなに無関心でいられる?」

矢崎粟は嘲笑うように、「彼女は矢崎美緒を贔屓にしていた。私が彼女のことを気にかける理由なんてないでしょう?他に用がないなら、私は行くわ。」

呪術王は彼女が本当に帰ろうとしているのを見て焦り、「何が欲しい?できる限り手に入れてあげる。私のためにひとつだけ頼みを聞いてくれないか?お願いだ!」

矢崎粟は眉を上げて、「何をすればいいの?まず言って。」

呪術王は心の中で喜び、笑いながら言った。「ある場所にものを届けてほしいんだ。数千万円を払うし、矢崎夫人の解毒術も教えよう。それに、私が長年集めた宝物も全部差し上げる。」

矢崎粟が引き受けてくれれば、ここから逃げ出すチャンスが得られる。

矢崎粟は少し考えてから、「何を、どこに届けるの?」

呪術王は指輪を外して矢崎粟に渡し、「北区南山通りに届けてほしいんだ……」