460 矢崎家には実力がある

小林美登里はそう思わなかった。

藤田大師が息子のために法事をしてくれたということは、家族に対して特別な思いがあるということで、もしかしたら矢崎粟のことを気に入っているのかもしれない。

そうであれば、矢崎粟の母親である自分のことも、きっと大切にしてくれるはずだ。

小林美登里はそう考えながら、得意げに笑って言った。「あの人たちは藤田大師を頼めないのは、それは彼らに力がないからよ。私たち矢崎家は違うわ。先日も藤田大師に法事をしてもらったのよ!」

妻の得意げな言葉を聞いて、矢崎正宗は思わず咳払いをした。

彼は目で小林美登里に警告を送った。

藤田大師は矢崎粟の面子を立てて来てくれただけで、矢崎家が自慢できることではないのだ。

しかし小林美登里は不満げに夫を見つめ、自分の言葉が間違っているとは思わなかった。

岡本大師は小林美登里を深く見つめ、「では、夫人が早く成功され、一日も早くご快復されることをお祈りいたします」と言った。

彼は藤田大師が矢崎夫人のために戒を破るとは思っていなかった。

その後、彼は数枚の符紙を取り出し、小林美登里の生年月日を聞いて、特別な模様を描いた。

描き終わると、岡本大師は小林美登里に渡して言った。「これは一時的に呪いの毒を抑える符紙です。矢崎夫人、必ず身につけていてください。効果は一ヶ月続きます」

矢崎正宗は手を合わせて「岡本大師、ありがとうございます」と言った。

小林美登里は符紙を受け取ると、それをポケットに入れた。気のせいかもしれないが、本当に少し楽になったような気がした。

彼女も笑顔で「ありがとうございます、岡本大師。あなたの法術は前の人たちよりずっと素晴らしいわ」と礼を言った。

岡本大師は微笑んで何も言わず、そして辞意を告げた。

矢崎正宗夫妻が病室の外まで見送る際、岡本大師は突然立ち止まって言った。「そういえば、もう一人、夫人を救える方がいるかもしれません」

矢崎正宗は驚いて「どなたですか?」と尋ねた。

岡本大師は姿勢を正して、ゆっくりと言った。「その方は中華街にはいませんが、解毒術を頼むなら、まず一度訪ねて、解毒術を施してくれるかどうか聞いてみる必要があります」

小林美登里はすぐに頷いて「それは問題ありません。私たちが伺います」と言った。

呪いの毒を解いてもらえるなら、少々面倒でも構わない。