460 矢崎家には実力がある

小林美登里はそう思わなかった。

藤田大師が息子のために法事をしてくれたということは、家族に対して特別な思いがあるということで、もしかしたら矢崎粟のことを気に入っているのかもしれない。

そうであれば、矢崎粟の母親である自分のことも、きっと大切にしてくれるはずだ。

小林美登里はそう考えながら、得意げに笑って言った。「あの人たちは藤田大師を頼めないのは、それは彼らに力がないからよ。私たち矢崎家は違うわ。先日も藤田大師に法事をしてもらったのよ!」

妻の得意げな言葉を聞いて、矢崎正宗は思わず咳払いをした。

彼は目で小林美登里に警告を送った。

藤田大師は矢崎粟の面子を立てて来てくれただけで、矢崎家が自慢できることではないのだ。

しかし小林美登里は不満げに夫を見つめ、自分の言葉が間違っているとは思わなかった。