「コンコン!」
ノックの音を聞いて、矢崎粟は顔を上げて言った。「どうぞ!」
ドアが開くと、川上燕だった。
川上燕は書類の束を抱えて、にこにこしながら言った。「粟さん、私たちのスタジオの最近のリソースをまとめてみましたので、ご確認ください!」
矢崎粟は頷いて、「ええ、いいわよ」
彼女は資料を受け取って目を通した。とても分かりやすくまとめられていた。
バラエティ番組、映画やドラマの脚本、さらには各種広告のリソースが分類され、それぞれのリソースのランクや撮影に必要な事項、注意点が一目で分かるようになっていた。
この資料の中には、矢崎粟に招待状が届いているものが大半を占めていた。
バラエティ番組では、競技系のものが多かった。
脚本は数が多いものの、スタイルの変化は少なく、美人役ばかりだった。
矢崎粟は尋ねた。「この中で私に合っているものはあると思う?」
この質問は、川上燕を試すためでもあった。
川上燕もこの問題について考えていたようで、少し考えてから答えた。「80年代の女性起業家の役がとてもいいと思います。うまく演じられれば、必ずファンを獲得できますし、賞も狙えると思います」
彼女は一旦言葉を切り、続けて言った。「この脚本は小説の翻案で、かなりのファン層がありますし、監督も多くのヒットドラマを制作してきた方なので、制作面でも問題ありません。ただ残念なことに、この作品の主演男優は矢野常に決まったようです」
言い終わると、期待の眼差しで矢崎粟を見つめた。
矢崎粟は頷き、目に笑みを浮かべながら、「あなた、才能があるわね。この仕事に向いているわ」
川上燕はこの期間、確かに努力を重ねていた。
川上燕は喜びと照れが混ざった表情で言った。「えへへ、全部スタジオの先生方のおかげです。私、この仕事が大好きなんです」
矢崎粟は少し笑って、「よし、じゃあこのドラマの監督に連絡して、私が出演を承諾したことを伝えて、面会の日程を調整してちょうだい」
前世で彼女はこの小説が大好きで、このドラマに出演したかったのだが、残念ながら序列が足りず、役を得ることができなかった。
放送された時、ヒロインの演技が下手で、視聴率も悪かった。
今回は、矢崎粟はこのドラマをしっかりと演じるつもりだった。
午後2時半。