矢崎美緒は告げ口を始めた。「私と従兄の小林瑞貴は矢崎粟に殴られました。彼女は従兄を蹴り飛ばし、私の顔も強く叩いたんです。顔が火照って、とても痛いです!」
この言葉に、小林美登里さえも呆然とした。
矢崎粟は暴力を振るうような人には見えない。本当に矢崎粟がやったのだろうか?
矢崎弘は腕を組んで、冷たい声で言った。「嘘をついているんじゃないだろうな?」
彼は矢崎粟を信じていた。仮に矢崎美緒を殴ったとしても、きっと矢崎美緒が原因を作ったのだろう。
矢崎政氏は矢崎美緒を母親の腕から引き離した。「用件があるなら言えばいい。母さんのお腹に寄りかかるな。母さんのお腹が腫れて辛いのを知らないのか?」
矢崎美緒の自己中心的な性格は以前から分かっていたので、母親のことを考えるとは期待していなかった。
小林美登里は四男の言葉を聞いて、心が温かくなった。
やはり、息子たちを身近に置いておいて正解だった。末っ子まで彼女を心配してくれるようになった。
小林美登里は尋ねた。「一体どういうことなの?詳しく説明してちょうだい。本当に矢崎粟が悪いのなら、私が正義を取り戻してあげるわ。」
矢崎美緒は事の顛末を話し始めた。
彼女は意図的に事実を歪め、矢崎粟を非常に凶暴に描写し、監視カメラを破壊したことまで話した。
矢崎若菜は考えて言った。「矢崎粟が手を出したということは、きっとあなたたちが何か悪いことをしたからでしょう。何か隠していることがあるんじゃない?」
矢崎美緒は不意にそう聞かれ、慌てて答えた。「ありません、何も隠してません。」
小林美登里は矢崎美緒と小林瑞貴が病院に行ったものの、特に異常が見つからなかったと聞いて、あまり気にしなかった。「美緒、もうこの件は忘れましょう。病院でも何も見つからなかったということは、大した怪我ではないってことよ。私にも正義を取り戻してあげることはできないわ。」
矢崎美緒は不満げな目つきで唇を噛んだ。
矢崎政氏は反問した。「まさか矢崎家に頼んで、矢崎粟を討伐してもらいたいとでも?」
本当に自覚がないな。矢崎粟こそが矢崎家のお嬢様なのに。家族との関係が切れていても、やはり家の宝物なのだ。
矢崎弘も不愉快そうな表情で矢崎美緒を見た。「監視カメラの映像もないし、診断書もない。これ以上何を望むんだ?」