517 三家連合

矢野朱里は矢野おじさんを見つめ、「今日知ったことを全部粟に話してもいいですか?」と尋ねた。

矢野寿は頷いて、「彼女に話しても構わない。もし彼女が普通の人なら、話しても意味がないどころか、危険を招くだけだ。でも彼女は優れた玄学師だから、知れば知るほど良いことだろう」と答えた。

もしかしたら、彼が長年解決できなかった難題を、矢崎粟が解決できるかもしれない。

矢野寿は何かを思い出したように、「ただし、矢崎粟以外には誰にも話してはいけない。矢野常や森田廣にも、それに伯母に会っても普段通りに接するように」と付け加えた。

矢野朱里は約束するように、「分かりました、おじさん。ご安心ください」と答えた。

これは矢野家に関わる重大な事で、彼女は必ず矢野家のことを考え、全ての行動を慎重に行うつもりだった。

矢野朱里は何かを思い出して、「おばあちゃんはこのことを知っているの?」と尋ねた。

矢野寿は首を振って、「具体的な状況は母には話していない。でも、母は何かを察しているはずだ。ただ何も言わず、陰ながら助けてくれているんだ」と答えた。

矢野朱里は頷いて、「分かりました。じゃあ、私もおばあちゃんには話さないでおきます」と言った。

すぐに料理が運ばれてきて、二人は話題を変え、最近の様子について話した。

食事の後、矢野寿は矢野朱里をショッピングモールに連れて行き、誕生日ケーキとプレゼントを買い、さらに矢野家系列のショッピングカードを何枚か贈った。

矢野朱里と別れた後、矢野寿は澤蘭子に見つかるのを避けるため、すぐに海外へ飛び立った。

矢野朱里は帰宅後、話し合った内容を全て矢崎粟に伝えた。

矢崎粟は話を聞き終わると、深い思考の色を浮かべ、「私も矢野おじさんの様子がおかしいと気付いていました。やはり矢野夫人を深く愛していたわけではなく、呪術をかけられて強制的に愛情を持たされていたんですね」と言った。

この結果は意外ではなかったが、矢野おじさんがこんなに早くに気付いていたことには少し驚いた。

矢野朱里は躊躇いがちに尋ねた。「粟、伯母さんも呪術をかけられているんじゃない?だからあの人をそんなに愛しているのかも」

彼女の心の中ではそう考えたかった。

そうでなければ、事が露見した後の澤蘭子の運命は想像に難くない。