516 手がかりが断ち切られる

矢野寿は頷いて、「私はとっくに人を派遣して調べさせたが、手掛かりが見つかるたびに、誰かに断ち切られてしまうんだ」と言った。

彼はただの企業グループの社長で、玄学のことは分からないから、あの人に対して何もできなかった。

この数年間、矢野寿も多くの対策を講じてきた。

しかし、これらのことは矢野朱里に話さない方がいい。知り過ぎても彼女のためにならないし、かえって別のトラブルを招くかもしれない。

矢野朱里は仕方なく拳を握り締めて、「じゃあ、伯父さんは演技を続けるしかないですね。それと、伯父さんは矢野徹と矢崎美緒が兄妹だということを知っていましたか?」

彼女は伯父さんの方を見つめ、目に好奇心を宿していた。

矢野寿は頷き、ゆっくりと話し始めた。「知っているよ。この数年間、私は澤蘭子が子供好きな人間ではないことに気付いていた。でも彼女は二人に対して特別に優しかった。一人は矢野徹、もう一人は矢崎美緒だ」