矢崎美緒は怒りで言葉を失い、どう反応すればいいのかもわからず、その場で息を荒げるしかなかった。
小島一馬は少し委屈そうに尋ねた。「黙っているということは、怒っているの?演奏のレベルについて聞いたのはあなたでしょう?なぜ正直な評価を受け入れられないの?」
彼の言葉が終わると、会場の視線が全て矢崎美緒に集中した。
矢崎美緒は笑顔を作って答えた。「いいえ、違います。さっきちょっと考え事をしていて、返事を忘れていただけです。あなたの評価はその通りです。これからもっと練習を重ねます」
彼女は後悔していた。評価を聞くべきではなかった。
場の雰囲気が固くなったのを見て、矢野常が前に出た。「私たちの演奏は終わりました。次の企画に移りましょう」
彼は矢崎美緒に冷たい視線を投げかけた。
同じグループだということを考慮しなければ、彼は絶対に取り繕いなどしなかっただろう。
司会者は笑顔で頷いた。「はい、次の企画では、会場から3人を選んでチームを組み、ゲーム対戦に参加していただきます。勝利すれば、夜のクルーズ旅行のチャンスが得られます」
一旦言葉を切り、続けた。「そしてもう一つ、この企画は全て生配信されます。ファンの皆様も皆さんとの対面を楽しみにしているはずです」
「ゲーム対戦?」矢野常は眉をひそめ、少し驚いた様子だった。
彼はこういうことは得意ではなく、内心抵抗があった。
司会者は笑顔で頷き、参加者たちに後ろの大画面を見るよう促した。大画面には人気ゲームの画面が表示されていた。
矢崎粟は目を輝かせ、意外な様子ではなかった。
森田輝は少し笑って言った。「これは小島様のために用意された企画のようですね。他にゲームが得意な方はいますか?今夜のクルーズは皆さん次第ですよ」
彼女はゲームはあまり得意ではないので、恥をかくのは避けたかった。
「このゲーム!私、爆破役ができます。挑戦してみたいです」田中凛は目を輝かせ、にこやかに言った。
彼女は大学時代にこのゲームの学内大会に出場し、良い成績を収めていた。足を引っ張ることはないはずだった。
小島一馬は矢崎粟の方を向いて「粟、君はできる?」と尋ねた。
矢崎粟は頷いて「私は何でもいいです。お任せします」と答えた。