食事の後、小林美登里は矢崎美緒を連れて二階へ上がった。
食卓で、矢崎政氏と矢崎若菜は目を合わせ、今日は異常なほど平穏だと感じていた。
矢崎政氏は頭を掻きながら、不思議そうに言った。「なんだか母さんが何か隠してるような気がするんだけど」
矢崎若菜は彼を横目で見て、「母さんが何を隠すっていうの?頭がおかしくなったんじゃないの?母さんが良くなったんだから、喜ぶべきでしょ」
彼から見れば、母は病人で、もう何かをする余力はないはずだった。
矢崎政氏はため息をつき、「そうだといいけど!」
もう母の尻拭いはしたくなかった。
この間、母は呪いの毒の苦しみに耐え、外出する元気もなく、兄弟たちが苦労した。
矢崎若菜は頷いて、「きっとね、矢崎美緒が母さんを慰めて、気分を良くしたんだと思う」
矢崎美緒は母をなだめるのが上手かった。
二人はこの件についてそれ以上考えず、食事の後で二階に上がった。
翌朝。
矢崎若菜は朝食を済ませると部屋に戻って休み、矢崎政氏は外出した。
矢崎家全体が静かになり、矢崎美緒と小林美登里は使用人に押されて外に出て、介護タクシーに乗ると、矢崎美緒はようやくほっとした。
介護タクシーは郊外の農園に向かい、到着すると、二人は直接三階の個室へ向かった。
個室には黒い衣装を着た男が座っていた。
男は四十歳ほどで、微笑みを浮かべていた。
テーブルには三つのお茶が用意され、部屋には茶の香りが漂い、窓の外からは鳥のさえずりが聞こえた。
これで小林美登里の気分も良くなり、この呪術師への印象も悪くなかった。
呪術師の名は藤村慎一、南西呪術師派に師事し、呪術について豊富な経験を持っていた。
小林美登里は呪虫のことについて尋ねた。
藤村慎一はにこやかに言った。「呪虫を移す際は、呪虫の毒性が消耗されます。次に移される人への影響は大きくなく、あなたの症状よりもずっと軽いものです」
「私は道家協会の会長と面識があり、彼が閉関から出次第、お嬢様の解毒術を頼みます。ご安心ください」
つまり、呪虫は一時的に小林瑞貴の体内に宿るだけで、問題ないということだった。
小林美登里はほっとした。それなら心配することはない。
小林美登里は頷いて、「儀式はいつ行うのがよろしいでしょうか?」