帰り道で、案の定大雨が降り出し、空から大豆のような雨粒が落ちてきた。
岡本家の車が矢崎粟をアパートまで送った。
岡本棉が車から降り、再び矢崎粟に感謝の意を示した。「矢崎大師、今回は本当にありがとうございました。あなたがいなければ、私たち家族はどんな目に遭っていたか分かりません。」
矢崎粟は首を振った。「気にしないでください。報酬はいただきましたから。」
彼女は岡本脚本家に一度頷いて、建物の中に入っていった。
矢崎粟が帰宅したとき、矢野朱里は家にいなかった。
彼女は少し片付けをし、夜に完全な地図をじっくりと研究した。
帰宅した翌日、矢崎粟は再び撮影を始めた。
撮影の合間に、彼女は小林瑞貴の病室を訪れ、小林瑞貴の体調を確認し、呪虫の状態を観察した。
幸い全て順調で、その状況を小林悠一と小泉西の二人に伝えると、小泉西はようやく安心したようだった。
数日後、矢崎粟と小島一馬たちが出演したバラエティ番組が放送された。
番組が放送されるとすぐに、矢崎粟の人気は再び上昇し、ファンも数百万人増加した。多くの脚本やバラエティ番組からオファーが舞い込んできた。
矢崎粟は撮影の合間に、いくつかのバラエティ番組にゲスト出演した。
参加できないバラエティ番組については、事務所のタレントたちを推薦し、彼らにより多くのチャンスを与えた。
この機会を利用して、矢崎粟は澤兼弘のために新たな脚本をいくつか選んだ。どれも彼に適した作品だった。
出演すれば必ず知名度は上がるだろう。ブレイクできるかどうかは、澤兼弘自身の運次第だった。
利木一輝は歌唱番組にチャレンジャーとして参加し、歌唱力を最大限にアピールでき、露出も増やせる機会を得た。
事務所の持つリソースは着実に良くなり、業界内の多くの人々の注目を集めていた。
矢崎粟が社長でなければ、各大手事務所は彼女をマネージャーとして引き抜きたがっていただろう。
多くのタレントたちも自ら門を叩き、事務所に所属したいと希望してきた。
矢崎粟の事業が日々発展し、全てが良い方向に向かっているのを見て、矢崎美緒は別荘で目を真っ赤にして怒りを覚えていた。不甘心でならなかった。
自分こそが矢崎家で育てられた令嬢なのに、矢崎粟のような野良娘の方が優秀だなんて……
そう考えると、矢崎美緒は心が挫けそうになった。