30万を渡して

本田水鳥は不満げに言った。「あなたはただのバラエティ番組に出ただけでしょう?帰ってきてから人が変わったみたいね。じゃあ、私に300万円くれれば、あなたのお父さんをちゃんと面倒見るから、心配しなくていいわ」

彼女は派手な使い方に慣れていたので、300万円は大した額ではないと思っていた。

田中凛は言った。「安心して、私はあなたに一銭も渡しませんよ。私が稼いだお金は全部父に使うつもりです。お金が欲しいなら、自分で稼いでください!あなたに父の世話を任せたら、もっと心配になりますよ」

この母親は、指一本動かさない人で、掃除さえまともにできない。父の世話なんて、とても無理だ。

「この生意気な娘!」本田水鳥は怒って手を伸ばし、田中凛を指差して罵った。「あなたが小さい頃、高熱を出した時、誰が病院に連れて行ったと思う?この何年間、誰があなたを学校に通わせて、食べ物に困らないようにしてきたの?」

その話を聞いて、田中凛はさらに怒りが込み上げてきた。

母が麻雀に出かけて、彼女を部屋に閉じ込めていなければ、熱を出しても誰も気付かないなんてことにはならなかったはずだ。

大学の学費に関しては、ほとんどが父が出してくれたものだった。

母は気が向いた時だけ、少しの生活費をくれるだけだった。

田中凛は深く息を吸い、冷たい声で言った。「帰ってください。私は介護士を雇って父の面倒を見てもらいます。もう関わらないでください。お金はあげません。あなたには一番可愛がっている娘がいるでしょう?そっちに頼んでください」

本田水鳥は顔を真っ黒にして怒った。「この親不孝者、あなたを産むくらいなら犬を飼った方がましだったわ。犬なら餌をあげれば尻尾を振ってくれるのに、あなたは恩を知らない、お金があっても母親に使おうともしない!この薄情者め」

彼女はようやく分かった。田中凛は不孝な娘だということを。

矢崎美緒は手元で育てていなくても毎月大金を送ってくるのに、田中凛は小さい頃から育てたのに、わずかな生活費しかくれない。

田中凛は黙って罵られるままで、心は平静だった。