621 矢崎美緒は被害者

小林美登里は意味が分からず、「みんな、なぜ私をそんな目で見てるの?」

「母さん、この件は私たち矢崎家にも責任があります。母さんは矢崎家としてどう対処すべきだと思いますか?」矢崎政氏は探るように尋ねた。彼も母の態度を知りたかった。

叔母と母の関係は常に良好だったのに、美緒に怒りで気を失わせてしまった。母は謝りに行くのだろうか?

それとも、美緒と小林博との付き合いを禁止するのだろうか?

しかし小林美登里は三人を冷ややかに見渡して言った。「誰が私たち矢崎家に責任があるって言ったの?あなたの言う通り、小林博自身が美緒の世話を焼きたがったと認めているわ。責任の大半は小林博にあるのよ。私たちの美緒はむしろ被害者なのよ!」

その言葉を聞いて、矢崎政氏は少し驚いた。

母がこのような考えを持っているとは全く予想していなかった。謝罪する意思は全くなく、むしろ自分たちこそが正しい側だと思っているようだった。

「被害者?」矢崎弘は口を開けたまま、思わず問い返した。

小林美登里は強く頷いた。「そうに決まってるでしょう。私たちの美緒は病室で療養中なのに、小林博のやつに付きまとわれただけでなく、田中千佳まで病室に来て騒ぎを起こして、美緒の回復に深刻な影響を与えたのよ。美緒は被害者なのよ。」

矢崎弘が何か言おうとしたが、傍らの矢崎若菜に袖を引かれ、もう言うなという合図を受けた。

矢崎政氏は深く息を吸って、「母さんがそう考えているなら、私からは何も言いません。今日私はもう一度病院に行って、叔母さんの様子を見てきます。母さんも一緒に来ますか?」

小林美登里は口を尖らせた。「私は行かないわ。病室には飽き飽きしたし、それに用もないのに病院に行くのは縁起が悪いわ。」

彼女は呪いの毒が治ってから、病院に行くことを非常に忌み嫌うようになっていた。

矢崎弘は我慢できずに尋ねた。「母さん、叔母さんとの関係は今まで良好だったじゃないですか?病気になったのに、見舞いにも行かないんですか?」

小林美登里は目を転がした。「それは昔の話よ。今は親戚も友達も欲しくないわ。」

どうせ小林家とも絶縁したし、田中千佳と良い関係を保っても意味がない。むしろ切り捨てた方がいい。今は腹の傷跡を全部消すことだけを考えていた。