614 不吉な予感

小林美登里なんて役立たずだから、彼女に話しても無駄よ。

それに、小林博が矢崎美緒の世話をしに行くのを小林美登里が知ったら、きっと喜んで賛成するだけで、止めたりしないわ。

「問題ありません。いつでも時間がありますから、田中おばさん、何かあったら電話してください」と矢崎政氏は笑顔で言った。

二人が電話を切った後、田中千佳はベッドの上でしばらく悶々としていた。息子を矢崎美緒から引き離す方法を考えていたが、どう考えても良い案が浮かばなかった。

一方、小林博は病室に入るなり、矢崎美緒は嬉しそうな顔で「いとこ、やっと戻ってきたの!私、一人でとても退屈だったの!」と言った。

彼女は、いとこがもう来なくなるのではないかと心配していた。まさか自分がいとこの心の中でこんなに重要な存在だとは思わなかった。田中おばさんに家に連れ戻されても、また病室に戻ってきてくれるなんて。

小林博はスイーツとミルクティーを持って、優しく微笑みながら「退屈だろうと思って、おしゃべりしに来たんだ。今夜も帰らないで、ずっと付き添うよ」と言った。

「やった!最高!」矢崎美緒は満面の笑みを浮かべ、口角が高く上がった。

ほら見て、彼女の魅力がどれだけ大きいか、いとこが母親の言うことさえ聞かなくなるほどだ。

二人は午後中トランプで遊び、夕方になると、小林博は栄養のある食事を注文し、二人で食事を済ませた後、介護人に帰るように言い、自分が直接矢崎美緒の世話をすると告げた。

介護人は少し躊躇したが、結局従って病室を出て行った。

病室には、また矢崎美緒と小林博の二人だけが残された。

しかし介護人は病院を出た後、田中千佳に電話をかけ、病室の状況を説明した。

田中千佳は仕方なく彼女を帰らせた。

夜の10時、田中千佳はベッドの上で寝返りを打ち、眠れずにいた。

彼女は昼間の息子の断固とした表情と、彼の言った一言一言を思い出し、ますます不安になっていった。

さらに1時間寝返りを打った後、突然起き上がった。

田中千佳は突然あることを思い出した。今日矢崎美緒の病室に行った時、あれは個室で一人しか寝られないベッドだった。じゃあ息子はどこで寝ているの?

彼女の心の中に、不吉な予感が湧き上がってきた。

田中千佳は矢崎政氏に電話をかけた。